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負担しかない相続した土地を手放せる可能性も 「相続土地国庫帰属制度」とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:永 滋康

実際に制度を活用するには?

 仮に、親から相続した活用予定のない田舎の土地を放置したら、どうなるのでしょうか。永弁護士いわく、相続した土地建物で問題が起きた場合、管理責任を問われると指摘します。

「例えば、経年劣化などにより劣化した建物に地域の子どもが立ち入って遊んでいたところ、古くなった柱が崩れて子どもにけがをさせてしまった場合。あるいは長年、風雨にさらされてひびが入り老朽化した崖地のコンクリート擁壁が、台風をきっかけに土砂崩れを起こし、近隣の家に迷惑をかけてしまった場合など、相続人として、不動産の所有者として、民法上の管理責任を負います。『自分は使っていないから』といった理由で、その責任を免れることはできませんので注意が必要です」

 とはいえ、すでに田舎を離れて遠方に住んでいる場合、使わない土地建物の管理を、お金をかけて将来にわたり延々としなければならないのは「あまりにも酷な話だ」と永弁護士。

 実際に制度を活用するには、どのような手続きを取ればいいのでしょうか。

「まずは、対象の土地を管轄する法務局に対して、審査手数料(1万4000円)の納付とともに国庫帰属の承認申請を行います。その際、法務局で事前相談をすることも可能です。また、土地の権利関係の確定や却下事由・不承認事由の有無の確認などについて、事前に弁護士や司法書士など、法律の専門家に相談することをおすすめします」

 その後は、法務局が承認申請を土地所在の国や地方公共団体に情報提供を行い、実施調査を経て、「却下処分・不承認処分」や「承認処分・承認通知」を発行。承認申請者に対して負担金額が通知され、期限内に負担金を納付することで、土地の所有権が国庫に帰属されることになるそうです。

「相続土地国庫帰属制度」は所有者不明の土地の発生を予防し、土地の管理不全化を防止するために始まった新しい制度です。まずは承認申請を行う前に、弁護士や司法書士など法律の専門家に相談し、手続きの負担をできるだけ軽減したいですね。

(Hint-Pot編集部)

永 滋康(えい・しげやす)

弁護士法人 永 総合法律事務所 代表弁護士。慶應義塾大学法学部法律学科 卒業。2006年 第二東京弁護士会 登録。現在、中小企業法務、不動産取引法務、寺社法務を専門とする弁護士法人永総合法律事務所の代表弁護士。日本弁護士連合会代議員。第二東京弁護士会常議員。日本民事訴訟法学会、司法アクセス学会、財団法人日本法律家協会の各会員。文部科学省再就職コンプライアンスチームメンバー。中小企業庁認定経営革新等支援機関。東京家庭裁判所 家事調停委員。
弁護士法人 永 総合法律事務所HP:https://ei-law.jp/
寺社リーガルディフェンス:https://ei-jishalaw.com/