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家庭での性教育でやってはいけないこと 「赤ちゃんどこから出てくるの?」子どもの質問に「神様が…」の返答はNG

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼 一夫

小学1~3年生を対象にしたオンライン性教育セミナーの一部【写真:Hint-Pot編集部】
小学1~3年生を対象にしたオンライン性教育セミナーの一部【写真:Hint-Pot編集部】

 子どもの性教育に対する関心が高まっています。8月にオンラインで行われた小学生や保護者向けの性教育セミナーは、子どもからの質問が飛び交う盛況ぶりでした。いま、日本は「性教育後進国」とされています。学校現場で性教育をすることにも大きなハードルがあります。背景にはどのような事情があるのでしょうか。また、家庭で性教育を始める場合、何から教えればいいのでしょうか。専門家を取材しました。(取材・文=Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼一夫)

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子どもたちの反応続々 「すげー」「ふむふむ」「そうだったんだ」

 8月5日に開催されたオンラインセミナー「夏休みスペシャル!こども性教育」。小学校低学年向け(1~3年生)の回をのぞくと、そこは子どもたちの熱気に包まれていました。

「おへそって何のためにあると思う?」「赤ちゃんってどうやって生まれてくるの?」

 講師が質問すると、「拍手」や「クラッカー」「ハート」など画面のリアクションボタンを押して興味津々です。

 男女の体の違いや、「プライベートパーツ」(口、胸、性器、お尻)について、「たとえ相手が家族でも先生でもほかの人が勝手に触ったり、写真を撮ったりしない場所」と説明を受けると、「すげー」「ふむふむ」「そうだったんだ」と、子どもたちの感想が続々とつぶやかれました。

 セミナーを主催した株式会社ファミワンは2021年から毎年夏に子どもの性教育セミナーを実施しています。

 規模は年々拡大し、今回は小学校低学年向け、高学年向け、未就学児を持つ保護者向けの3部構成で初めて展開。低学年向けの参加者は保護者を合わせて175人で、最も多くなりました。講師を務め、イベントの発案者でもある看護師の西岡有可さんは「3年やっていますけど、年々興味持つ方は増えているように思います」と手応えを口にします。

 オンラインであれば、参加者の顔が映ることはありません。また、コロナ禍の影響やIT教育が進んだことにより、子どもたちはオンラインの受講に慣れているといいます。

「オンラインと性教育というのは私はすごく相性がいいと思っています。お子さん自身もみんなで受けているんだけど、自分が受けていることは外から分からないという安心感がありますよね。生理や精子、卵子という話をしたときに、『あ、あいつあんな顔してるよ』とからかわれる経験があると、それ以上性教育を受けるのは難しくなってしまったり、嫌なものになってしまったりする。オンラインは、デリケートな話もすごくまっすぐに安心して受けれると思います」と、好評の理由を明かしました。

 学校で行われる印象が強い性教育。それをなぜ民間企業がセミナーという形で始めたのでしょうか。

 そこには日本の性教育に対する強い危機意識がありました。

「実は2021年の前に小学校のPTAから保護者向けの性教育をしてくれないかという依頼があったんですね。それで講演をしたところ、非常に反響がありました。最初は学校に働きかけたんですよ。だけど、学校では文科省の学習指導要領があるので、『性交渉』という言葉は使っちゃダメなんですね。あと親御さんの中には性教育をしてほしくない方もいます。学校主体でするのはちょっと難しそうだなと私たちもトライする中で思って、であれば自分たちが主体で広く世の中、皆さんに開けた形で開催しようかというのが始まったきっかけになっています」

 性教育は「学校で教えるのでは?」と思っていても、言葉の表現に制限がある中、教える側も簡単ではありません。女子は生理が始まる小学校高学年に時間が設けられることもありますが、男子は「本当にないと思います」と、放置されることも珍しくない現状があります。低年齢から段階的に教える欧米と異なり、日本は「性教育後進国」と言われています。

「精子と卵子が出会って受精します、着床しますは話していいんだけど、性交渉が話せない。その言葉を使わないで話すとなると、非常に難しくなります。海外では包括的性教育というのがグローバルスタンダードになっていて、その中では『正しい言葉で、小さいうちから伝えましょう』というのがあります。なので仲良しするとか、そういう言い方ではなくて、性交渉は性交渉、ペニスはペニス、子宮は子宮、卵巣は卵巣のように、しっかり伝えてあげるのが私たちの基準としてもあります」

 国際的なガイドラインでは、3歳から教えることが望ましいとされています。また、子どもの年齢に合わせた性教育の必要性も説かれ、学校のカリキュラムに組み込まれている国もあります。一方で、日本の学校では性教育を教えることは義務ではありません。「避妊を教えたら性行為を助長するのでは」という保護者の声も根強く、議論自体が停滞しています。

「メダカの卵が分割してという授業は小学校4年生ぐらいでやると思うんですよ。メダカはすごくやったけど、人間はさくっと行くみたいな濃淡はありますよね」

 性教育の機会がない子どもたちは、自ら情報を探すしかありません。ネット上に頼って、誤った知識を持ってしまう場合もあります。