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イカはダイエット向きの食材? イカ墨の黒色の正体とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

教えてくれた人:和漢 歩実

新鮮なイカの刺身(写真はイメージ)【写真:写真AC】
新鮮なイカの刺身(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 フライや天ぷら、刺身など、古くから日本人の食卓で親しまれているイカ。イカ飯やイカそうめん、屋台のイカ焼きなども人気です。そんなイカには、食材としておいしいだけでなく、実はうれしい健康効果があるそう。どのような栄養が含まれているのでしょうか? いまさら聞けないイカの豆知識を、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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イカといっても種類は豊富 姿や味が微妙に違う

 イカは、貝類と同じ仲間の軟体動物。世界に約500種類も存在するといわれています。見た目の胴が細いツツイカ目と胴が丸いコウイカ目に分けられ、日本近海だけでも約130種類が生息。種類によって、姿も味も微妙に違いがあります。

 日本で広く食べられているのは、スルメイカです。胴体が長く、三角形のヒレ(耳、エンペラ)が特徴。刺身、姿焼き、天ぷらなどさまざまな調理方法で食べられています。身にねっとりとした甘みがあり、内臓の味も良いので、塩辛にすることも。干したスルメイカを「寿留女」と記し、結納品としても使われています。

 ヤリイカは姿が槍に似ていて細長く、途中からひし形のヒレが特徴で、ササイカとも呼ばれています。身はやや薄く、上品な甘みがあり、刺身にすると美味。焼いたり、揚げたりしてもおいしいです。ホタルイカは全長5~7センチほどの小さなイカ。体表から青白い光を発するため、このような名前がついたとか。ゆでてもやわらかく、旨みが強いのが特徴です。

 また、高級な寿司ネタとしても知られるのがアオリイカ。大きくて「イカの王様」とも呼ばれています。ずんぐりとした胴体に、丸いヒレを持っているのが特徴です。同じく高級な寿司ネタや天ぷらとして人気のコウイカは、丸いフォルムと目が特徴的。たくさん墨を持っているのでスミイカとも呼ばれます。ケンサキイカは透明感のある色で、環境や感情により体色を変え、新鮮なものには赤く小花柄のような模様があります。

イカは栄養豊富 ワタには栄養、墨には旨みも

イカの塩辛とごはん(写真はイメージ)【写真:写真AC】
イカの塩辛とごはん(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 イカには、筋肉や皮膚、ホルモンなど、体のあらゆるものを構成する良質なたんぱく質がたっぷりと含まれています。脂質と炭水化物が少ないため、エネルギーは意外に低め。100グラムあたり、生のスルメイカは76キロカロリー、ヤリイカは79キロカロリーです。

 もっとも注目される栄養成分は、なんといってもタウリンでしょう。栄養ドリンクの疲労回復効果でなじみがありますよね。タウリンは肝臓の働きを良くするほか、コレステロール値や中性脂肪の減少、糖尿病や高血圧の予防などの効果が期待できます。水溶性であるため、汁も食べられる煮イカやブイヤベースなどがおすすめです。

 イカの肝臓部分(ワタ)は、目の健康や免疫機能に期待できるレチノール(ビタミンA)を多く含み、塩辛として食べるのも良いでしょう。ただし、塩分のとりすぎには気をつけてください。このほか、青魚には及びませんが、健康に良いオメガ3脂肪酸(DHA、EPA)も含みます。

 イカといえば、イカ墨の料理も人気です。そもそもイカは、外敵から身を守るために粘りが強い墨を吐き出します。その墨が塊となって分身のようなものを作り出し、イカはその隙に逃げるのだとか。イカ墨の黒い色素成分はメラニンで、アミノ酸を含み、旨みがあります。イカ墨を使ったパスタ、リゾット、パエリアが味わい深くおいしいのはこのためです。ただし、たくさん食べたあとは歯への着色や、翌日の便の色に驚かないように。

 以上から、イカは良質なたんぱく質を含み、脂質が少なくエネルギーも低いため、ダイエットにとても向いている食材です。また、古くから伝わる食養生の薬膳でイカは「血を補う」といわれ、月経不順や貧血などに良いといわれています。

 ただし、痛風の原因とされるプリン体については、決して低くありません。ちなみに、痛風の人についてプリン体は1日400ミリグラムが目安といわれていますが、スルメイカは100グラムあたり186.8ミリグラム含みます。痛風ぎみの人は、食べすぎに気をつけましょう。

(Hint-Pot編集部)

和漢 歩実(わかん・ゆみ)

栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾