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「今あるものを使って地方の町を活性化したい」 30歳の若き建築家が「協力隊」として活動するワケ

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

建築家としての“本業”以外のことも体験・勉強中

 建築に関わる“本業”以外も、新たなことを体験中です。そのひとつが、地元の県立蓼科高校での講義です。月に1度、改修中の家を見たり、町内の空き家の実情を伝えたりする役目を負っています。

 そこで思い知ったのは、言葉で人に伝えることの難しさでした。「これまで人前で話す機会はなかなかありませんでした。しかも相手は高校生。理解してもらえる話題や言葉で話さないと、まともに聞いてもらえません。そのためにどんな内容を話すべきなのかなど、動画サイトを見て研究するようになりました」といいます。

 また、地元のケーブルテレビ局にも定期的に出演し、有効な空き家の利活用の方法や、空き家バンク登録につながる「片づけサポート」の活動を紹介しています。どちらも「いずれプレゼンにいかせる、そのためのステップになるといいですね」と貪欲です。

 そうした活動の甲斐もあって、秋山さん自身の存在も地元住民に認識されるようになりました。移住相談施設「町かどオフィス」にいると、ご近所の方々がかわるがわる顔を出し、先日も「庭で採れたから食べて」とミョウガをいただいたり、「うちのトマト、いつでも自由にもいでいいよ」と声をかけていただいたりするそうです。

 学び、鍛えられながら、業務の一つひとつが実績として積み上がっていく。「地域おこし協力隊」での業務と立科町での暮らしは、技量を磨くだけでなく、人としても成長する場なのかもしれません。

 最初は店も少なく、夜も暗いと感じた町ですが、来た当初に先輩に聞かされた言葉を秋山さんは今も胸に刻んでいます。

「何もないところだからこそ、何かをつくったときのインパクトが大きい」

 近い将来、若き建築家が立科町に大きな足跡を残す日が来るはずです。

(芳賀 宏)

芳賀 宏(はが・ひろし)

千葉県出身。都内の大学卒業後、1991年に産経新聞社へ入社。産経新聞、サンケイスポーツ、夕刊フジなど社内の媒体を渡り歩き、オウム真理教事件や警視庁捜査一課などの事件取材をはじめ、プロ野球、サッカー、ラグビーなどスポーツ取材に長く従事。2019年、28年間務めた産経新聞社を早期退職。プロ野球を統括する日本野球機構(NPB)で広報を担当したのち、2021年5月から「地域おこし協力隊」として長野県立科町に移住した。