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虫除けシールであわや窒息 嘔吐する赤ちゃんとパニック状態の母 記憶を頼りに行った救命行動に「命の恩人」の声
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小児科医に聞く適切な救命の手順 救急車を呼ぶタイミングは?
このような場面に遭遇したとき、目撃者はどのような行動を取ったらいいのでしょうか。
たけつな小児科クリニックの竹綱庸仁院長は、「シチュエーションによって変わってくると思います」と前置きしつつ、赤ちゃんが異物を詰まらせて苦しんでいるという状況で、あっぷるさんの行動は適切であったと称えました。「人を助けようとしてやられたことは、ただただ素晴らしいこと。口の中を見て明らかに何か小物が詰まっている状況であれば、口の中に手を入れるという選択肢は間違いではない」と評価しました。
また、娘を通じてすぐに店員に協力を仰いだことも、ポジティブに受け止めました。子どもが小学校低学年以下だった場合は、逆に大人に状況を正確に伝えられない可能性があるため、注意が必要との考えを示したうえで、「救命はチームというか、人の手が多いほど助かる率は上がっていきます」とサポートを求めることは大切な行動だといいます。
一方で、竹綱院長は「同時にやらなきゃいけない行為」として、救急車を呼ぶ必要性も伝えました。正確な処置や治療法が取れるだけでなく、「手を突っ込むことによってガブッてかまれて出血するリスクもあります」と二次被害を防ぐ手段であることも指摘しました。「本人が電話できない場合は、周りにいる人に協力してもらって、『119番かけてください』でもいいと思います」と話します。
救急車が来るまでは時間がかかるため、赤ちゃんの状態が急変してしまうことを不安に思ってしまう人もいるかもしれません。先に口に手を入れるのか、まずは119番をかけるのか、優先順位はどうつければいいのでしょうか。
「優先順位をつけるにあたっては、他の補足的要素がすごく重要になります」
今回のケースでは、嘔吐しているときの赤ちゃんの状態が一つのポイントになると解きました。
「私もたくさんの知らない方に助けていただいた」 “恩返し”の思いも
「飲み込んだ状態がどうだったかで答えが変わってきます。なんかぐったりしていて顔色や唇が真っ青になるチアノーゼといわれる症状が出ている状況なら、緊急性が高いと判断して手を入れなければいけないと思います。ただ、呼吸状態がそんなに悪くなくて、チアノーゼも出ていない状況であれば、救急車を待てる可能性がある。泣いていればたぶん呼吸はしているから気道は通っていると考えられる。となると、すぐに異物を取り出さなくていいという選択肢になります」
医療従事者でないために、患者の状態を適切に見分けるのは難しいかもしれません。その場合は、「救急車を呼んでから、やれることをやっていく」というのがベストな方法だと、竹綱院長はアドバイスしました。「口の中に手を入れないという選択肢もあります。ただ、みんながその選択肢を取ると、やっぱり命を落としてしまうケースもあるので」と、ケースバイケースの対応が求められると主張しました。
救急車を呼ばなかった理由について、あっぷるさんは、スーパーが大きなショッピングモール内にあったため、救急車が走行可能な出入口が分からず、スムーズな誘導が困難だったため、店員に依頼しようと考えたと話しました。
赤ちゃんを目撃した場所は、ひとけのない通路で、他に通行人はいませんでした。ファインプレーであることは間違いないでしょう。ただ、あっぷるさんはいたって謙虚です。「私としてはたまたま通りかかっただけなので、特別なことをした自覚はありませんでした。指を突っ込むまではしないにしても、あの状況ならお母さんに声をかけたり、店員さんを呼ぶ方はたくさんいると思います」と反響を受け止めます。
そして、「今でもそうですが、私もこどもが小さい頃は特にたくさんの知らない方に助けていただいてきたので」と、自身の育児についても見知らぬ人の協力が多々あったことを明かし、赤ちゃんの無事を祈りました。
(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・水沼 一夫)