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わずか1年で閉店から一念発起 移住先で繁盛店を切り盛りする元俳優 成功の秘訣とは

公開日:  /  更新日:

著者:河野 正

「古民家カフェ&宿 むすび」の前で【写真提供:田中裕士】
「古民家カフェ&宿 むすび」の前で【写真提供:田中裕士】

 広島県三原市の瀬戸内海に面した「古民家カフェ&宿 むすび」は、県内外から老若男女が集う人気店。もともと俳優という異色の経歴を持つオーナーの田中裕士さんは、地元・大阪で意気軒昂にオープンさせた飲食店で失敗し、背水の陣で広島に移住してきました。今では常に予約が途切れないという人気店にまで成長させた田中さんに、成功の秘訣を聞きました。

 ◇ ◇ ◇

移住先での手厚い支援も

 古民家カフェ創業の夢を実現させるため、田中裕士さん、咲子さん夫妻は2018年5月に大阪から広島県三原市へ移住。大阪でオープンした餃子店は1年で閉店に追い込まれたため、今度こそはと約1年後のオープンに向けて周到な準備に取りかかりました。

 店舗に決めたのは、築100年以上の古民家。空き家バンクで見つけたこの物件は、庭園をはじめ驚くほど広大な敷地面積を有し、瀬戸内海に面した風光明媚な環境が魅力です。

 東京で10年ほど俳優活動を行っていた田中さん。引退後、故郷の大阪に戻って餃子店を始めようとした際は、どの金融機関にも融資してもらえませんでした。しかし、移住した三原市は移住者を積極的に誘致しており、さまざまなセミナーなどを開催していました。また、市街地を活性化させる事業を推進し、創業支援を行う民間企業も。

「三原市が開催する、お店をつくる勉強会に4回参加すると、公庫から借り入れる利子が下がる制度もあり助かりました」

 建物をリフォームするにあたっての建築基準や、経営手法など、学んだことは多かったそうです。

SNSをフル活用 メニューも“映え”を意識

“映え”を意識し、野菜をふんだんに使ったランチメニュー【写真提供:田中裕士】
“映え”を意識し、野菜をふんだんに使ったランチメニュー【写真提供:田中裕士】

 田中さんには、オープン前の準備段階でとくに重点を置いたことが2つありました。

 まず、告知のためにSNSをフル活用。「三原市の古民家で飲食店を開店させます」と、インスタグラムで毎日のように発信しました。「やはりSNSは見栄えが勝負ですから、ランチはたくさんの小鉢を並べるようにし、店の雰囲気も“インスタ映え”するような写真を掲載するようにしました」と語り、開店前の試作段階から食欲をそそる料理写真などの投稿を熱心に続けたそうです。

 2つ目は提供するメニュー。「外食というと『野菜が少ない』と思われる方も多いので、3種類の小鉢で野菜を摂取できることをアピールしました」と説明します。豊かな自然あふれる三原市の野菜はおいしく、たくさんの農家と知り合った今では、直接やりとりすることも増えたのだとか。

 2019年5月、「古民家カフェ&宿 むすび」の看板を掲げ、大型連休中にいよいよ新規開店日を迎えました。根気強く続けたインスタグラムでのアナウンス効果もあり、出だしから想像を上回る好調ぶりだったそうです。

 ランチメニューは開店当初から現在も3種類です。肉をメインにした「日替わりむすび御膳」は、小鉢3品と刺身、ごはんとみそ汁付きで、肉を魚に変えることも。このほか、「お魚御膳」「海鮮丼」や「グリーンカレー」といった月替わりメニューを提供しています。

 咲子さん手作りの「バスクチーズケーキ」など数種類のデザートは、お客さんの9割が注文する人気メニュー。来店するのは6割以上が市外在住者だといいます。