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仕事・人生

わずか1年で閉店から一念発起 移住先で繁盛店を切り盛りする元俳優 成功の秘訣とは

公開日:  /  更新日:

著者:河野 正

コロナ禍で新たなビジネスを立ち上げ リスクをチャンスへ

 開店から10か月ほどすると、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、とくに飲食業は大変な困難に直面しました。「むすび」はどうだったのでしょうか?

「コロナのニュースを見聞きするなか、学校の給食がなくなってお母さんが困っているのを知り、お弁当のデリバリーを三原市で一番早く始めたんです。すぐに新聞やテレビで話題になりました」

 さらに、コロナ感染者が増え、飲食店などが終日休業などの行政指導を受けるようになると、通信販売を開始。

妻の咲子さんが手がける「バスクチーズケーキ」は大人気に【写真提供:田中裕士】
妻の咲子さんが手がける「バスクチーズケーキ」は大人気に【写真提供:田中裕士】

「私たち夫婦の次の夢がお菓子の通販だったんです。『むすびスイーツ』として、2020年6月からインターネット販売をスタートさせました。俳優時代の仲間がSNSにアップしてくれると一気にバズりましたね。きついときにどれだけ行動できるか、あのときはその大切さを身にしみて感じ、自信にもなったと思います。国がどうこうではなく、自ら考えて動かないといけません」

現状維持は衰退 新たな夢へ向かって邁進する田中さん夫妻

 料理は咲子さんが、ケーキも含めてひとりで手がけてきました。今年4月には、敷地内に店舗とケーキ工房を兼ねた「むすびカフェbettei」をオープン。さらに多忙を極めることになりそうです。

 最初に大阪で営んだ餃子店は1年で閉店を余儀なくされましたが、今では三原市を飛び越え県内でも屈指の人気店にまで成長。いったい、成功した理由はなんだったのでしょうか。

「人を大事にしてきたことが、すべてではないでしょうか。苦しいときも私の周りにはいろんな人がいてくれたし、今も新たな出会いがたくさんあります。妻にはおいしい料理を提供できる才能があり、それを私が広める。こうやって両輪が回ったから、今があるんだと感じています。初めの店で失敗し、精神的にもかなりまずかった時期を乗り越えたからこそ、歯車がかみ合ったと思いますね」

 現在、全国各地で古民家や空き家への移住を望む人が増え、リノベーション後に飲食店などの経営を計画する人も多くなっています。「立地条件が最も重要で、成否の5~6割を占めるのではないでしょうか。何を求めている人々が、どこにどれくらいいるのか調査したほうがいいですね。駅などから少し遠くても、自分の中で『ここだ』というものがあることが大切です」と、田中さんはアドバイスを送ります。

「バスクチーズケーキ」は日本各地の催事に出店するほど人気【写真:Hint-Pot編集部】
「バスクチーズケーキ」は日本各地の催事に出店するほど人気【写真:Hint-Pot編集部】

 田中さんのモットーは「チャレンジし続けること、現状維持は衰退だ」と言い切ります。それを裏付けるように、「実家の薬局だった店舗が空いているので、そこでお菓子を販売するのもいいし、まだ食べていけない役者の後輩が働ける場所をつくれたら最高ですね。妻は料理教室や本を出版し、食に関わる仕事をやりたがっています」と語りました。田中さん夫妻はこれからも、広がる夢に向かって二人三脚で突き進む覚悟です。

(河野 正)