食
鶏の換羽期から考えるアニマルウェルフェア 卵の安定供給の裏側にあるもの
公開日: / 更新日:
米ロサンゼルス在住のナチュラリスト・小田島勢子さん。都会の片隅にある小さな平屋で、日常にあふれる小さな恵みを大切にして暮らしています。小田島さんが裏庭で飼育している鶏が換羽期に入り、米国でも秋の訪れを感じる季節になりました。今回は、鶏卵とアニマルウェルフェアについて考えてみましょう。日本では卵不足や原料高で卵の値上がりが続いています。改めて、安定的に卵を手に入れられる環境のありがたさを感じますが、その背景を知ることでまた違う見え方がしてきます。
◇ ◇ ◇
カボチャが並び、シナモンが香る9月 米国で感じる秋の訪れ
9月も後半。私が住むロサンゼルスでは朝晩はすっかり肌寒く、薄い長袖を羽織る季節になりました。この時期から年末に向けて、ハロウィンなどの行事が続き、いつもよりも日々が足早に過ぎていくようになります。
スーパーマーケットの店頭にはカボチャが、子どものお菓子売り場はシナモン味が並び、飲み物やキャンドルでさえも、シナモンの香りが期間限定で登場するのが米国における秋の風物詩です。我が家の場合は、それよりひと足早く秋の到来を感じることも。そのお知らせは、裏庭の鶏たちと、レモンやオレンジの花が告げてくれます。
秋は、雌鶏の羽根がすべて抜け落ちる換羽期。夏を越し、日が短くなる秋から冬の間にかけ、鶏のホルモンバランスが変化します。すると、古くなった羽根を落とし、産卵を休憩する時期に入ります。
これは鶏に限らず、たくさんの種類の鳥類にみられる生理的現象です。とくに鶏にとっては、それまで毎日のように産卵し続けていた体をひと休みさせるためのデトックス・回復の時期とも言えるでしょう。
鶏たちが換羽期に 疲れた体を休める期間
我が家の鶏たちは約2か月の間に徐々に羽根を落とし、やがて新しいつやつや、ふかふかの羽をまといます。この期間は鶏たちにとって休憩の時間でもあるので、すべての機能を省エネ化しているように見えます。
いつもほど鳴かず、動かず、食欲も普段ほどないため、どんどん痩せていきます。ただただ自分の体の内側で起きていることにフォーカスして、ゆっくりと疲れた体を休めます。そしてやがて羽根がきれいにそろう頃、また元気に産卵を始めます。
この間、私たち家族が裏庭からもらう卵の量はめっきり減ります(我が家にはいませんが、品種により比較的寒い時期に産卵する鶏もいます)。