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鶏の換羽期から考えるアニマルウェルフェア 卵の安定供給の裏側にあるもの

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

自らの暮らし方そのものを心地良く感じていくには

 この鳥類の生理的なメカニズムを利用し、人工的に休産・換羽させる「強制換羽」を行う鶏卵会社があるといいます。雌鶏に一定期間エサや、時には水をも与えず産卵を停止させ、換羽を誘発する方法です。

 この方法をとることで、鶏舎の鶏全体のコンディションが一定になり、生産管理がしやすくなるそう。また、採卵期間をある程度コントロールすることができ、卵の生産量が増えることを目的としているようです。しかし、強制換羽で10日から2週間エサを与えられず絶食状態になった鶏は、羽根を落とすだけでなく、強制的な飢餓により命を落とすことも少なくないのだとか。

 アニマルウェルフェアの考えは広がりつつありますが、こうした鶏の多くは、ケージ飼いで一度も太陽の光を浴びることなく一生を送ります。鶏には本来、エサを探すために地面や物をつつくという生理的欲求が備わっています。ところが、強いストレス環境によって、それが仲間をつつくという行為に転嫁されるそうです。

 そのため多くの場合、採卵鶏は小さな雛の段階でくちばしを切断されます。くちばしには神経、血管が通っており、切られるときは痛みを伴うだけではありません。そこから感染症を患い、死亡する鶏もいるといいます。

持つ色素が違う鶏から生まれた色とりどりの卵【写真:小田島勢子】
持つ色素が違う鶏から生まれた色とりどりの卵【写真:小田島勢子】

 年中、24時間、遠い産地の食材や物資を手に入れられるのは、とても便利でありがたいことです。けれど、それが当たり前ではないということ、私たちが年中、スーパーで形のそろった卵を見かけることの背景には、一部でこういった事実があります。それを少しだけ頭に置くことで、選ぶものや応援する会社、自らの暮らし方そのものを心地良く感じていけたら幸せだと思っています。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/