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起源はルーズベルト大統領の愛称「テディ」 世界中でテディベアが愛されるワケ

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

日本最大のテディベア美術館 来場者はファミリー層を中心に多彩な顔ぶれ

 多くの人に愛されるテディベアを約1万1000体も展示するのが、蓼科テディベア美術館です。1995年に「世界の平和」を祈念して設立されました。世界15か国18テーマの展示ではロイヤルウェディング(英国)や万里の長城(中国)、動物の楽園(ケニア)など、それぞれの国や地域の特徴が表現されています。ギネス世界記録にも認定されたわずか0.8ミリのテディベアや、珍しい切り絵で作られたもの、あの人気アイドルグループを模した「TDB48」など、ここでしか見られないものも数多くあります。

「夏には必ず作品展を開催しています。不定期ではありますが、人気ぬいぐるみ作家さんの作品展など、春夏秋冬を通じて開催したいと考えています」

 芝間さんによれば、国内のテディベア作家は約500人。「コレクターさんは少なくともその倍以上はいますので、テディベアのコアなファンは1000人を超えていると思います」と控えめですが、同館では年間約2万人もの来場者を楽しませています。

 テディベアという限られた展示のため、美術館に子どもを中心としたファミリー層の来場者が多いのは当然のこと。ところが、実際にはファミリー層以外にもいろいろな来場者がいるようです。

「少なくとも2か月に1度、多いときは月に複数回いらっしゃいます。今月だけでもう2度、お見えになっています」(10月上旬取材時)

 芝間さんが教えてくれたリピーターさんは、長野県内からお越しになるテディベアと動物のぬいぐるみをご持参されるお客様。美術館では毎年開催されるイベントに合わせて年に1度は必ず訪問するという来場者も少なくないのですが、このお客様は年間パスポートを購入している、“蓼科テディベア美術館のリピーター”なんだそう。

 家族である自身のテディベアやぬいぐるみに着せる洋服を購入したり、自身が所有するテディベアを持ち込んで自由に撮影できる館内で一緒に写真を撮ったりして、美術館を満喫しているようです。学芸員である芝間さんいわく、「私よりもいろいろとご存じですし、いったいどのくらいテディベアをお持ちなのか……。もしかしたらご自宅で博物館が開けるくらいかもしれません」と驚きを隠せない様子。

バイクや自転車で大きなテディベアを持って帰る人も

 ほかにも、ちょっと意外な来館者がいるようです。

 蓼科テディベア美術館は標高約1400メートルの高原リゾートに位置し、ビーナスラインという絶景道路のすぐそばにあります。ライダーの聖地として知られるビーナスラインは、冬の閉鎖期間を除けば多くのバイク乗りでにぎわう場所です。

「オートバイでいらっしゃった男性で、ショップで買われたテディベアをそのままバイクに載せて走っていった方もいましたし、館内ショップで購入された大きなテディベアを背負ったまま、自転車で帰った人もいます」

 実は、学芸員の芝間さん自身もテディベアの大ファン。小学生のとき、祖母に買ってもらったテディベアを今も大事に枕元に置いているそうです。

「自分が小学生のときに着ていたワンピースを着せたりしています。愛着が湧くと、自分とおそろいのものを身に着けさせたり、カスタムしたりしたくなるんです。作家さんの一点もののテディベアなど、目が合って『欲しい!』って思うと、どうしても連れて帰りたくなりますね」

 テディベアの世界について、「“沼”がすごい」と語る芝間さん。趣味などにハマり込んだら抜け出せなくなる……という状況を、今時の“沼”という表現で説明してくれました。

 最古参メーカーとして知られるシュタイフ(ドイツ)をはじめ、ハーマン・テディ(同)、メリーソート、チャーリベアーズ(以上、英国)といった有名メーカーなど、世界では10社以上がテディベアを制作。かわいい顔立ちや大人っぽい表情、鼻の高さや立体的な肉球など、それぞれ個性があります。そこに個人作家の作品も加われば、テディベア好きにとって“沼落ち”は避けられないのかもしれません。

 そればかりか、着せ替える服も多彩にあります。なかには1万円以上するものもありますが、「好きな方にとっては高くない」(芝間さん)といいます。