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路線の約7割がトンネル 逆転の発想で真っ暗な車内をシアターにしたローカル鉄道 試み始めたワケ

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

旅行業の登録 収入減を埋めるために走らせた企画電車

 北越急行はほくほく線の「ゆめぞら」以外にも、2020年第9回鉄旅オブザイヤーのグランプリを獲得した、列車の運行が終了した深夜にトンネル内を探検する「ナイトタートル」などの企画電車も走らせています。その理由には、北陸新幹線の開業があるそうです。

「2015年に北陸新幹線の長野から富山・金沢間が開業したことによって、特急列車『はくたか』が運行を終えてしまったんです。この『はくたか』は、関東から北陸方面に向かうお客様にたくさんお乗りいただいていた列車で、実は当時、弊社の運輸収入の約9割がこの『はくたか』の運賃によるものだったんです。それが北陸新幹線の開業とともに完全になくなってしまいましたので、ほかの地域の地方鉄道と同様に非常に苦しい経営状況になってしまいました」

 どうしたら多くの人に利用してもらえるのか、会社全体として考え、2016年に旅行業登録。自社で旅行商品を取り扱えるようになったことで、地域の魅力や特性を生かし、利用者が楽しめる企画電車を商品化することができるようになったといいます。

「これで『はくたか』の収入減を回復できたかといえば、そうでもないんですけど、それでもお客様に興味関心を持っていただき、ほくほく線をもっと知ってもらいたいと思っています。『ゆめぞら』をきっかけにほくほく線を知った人もたくさんいらっしゃると思いますので、今後もおもしろいと思われる旅行商品を企画していきたいなと思っています」

 現在、「ゆめぞら」の運行は毎週日曜日の上下線各2本(計4本)。予約することはできませんが、「行き先までの切符さえあれば乗れる列車」だといいます。過去に、ゴールデンウイークやお盆などの繁忙期に車内が混雑し鑑賞できなかったことがあったそうですが、現在では落ち着いており、「乗れないことはない」そうです。

 車窓の景色を楽しむ意味ではマイナスとなる「トンネルが多い」という特徴を、逆手に取って誕生した「ゆめぞら」。車窓から見える壮大な空と、車内に映し出される夢の空の両方を楽しめます。六日町(むいかまち)駅から犀潟(さいがた)駅までの約1時間、利用者に楽しんでもらいたいとの思いからさまざまな企画が施された、ほくほく線の旅もいいですね。

※記事は2023年10月時点の情報です。

◇北越急行株式会社
新潟県南魚沼市で「ほくほく線」を運営する第3セクターの鉄道会社。北陸新幹線の開業前までは特急列車「はくたか」も運行していたが、開業とともに廃止された。主に、地域密着型のローカル線として地域の人の“足”になっているが、2016年には旅行業登録によって自前の旅行商品も販売。「ナイトタートル」などの企画電車や、トンネルをいかした車内天井に映像を映す「ゆめぞら」などが人気で、多くの乗客を楽しませている。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)