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自称“乗り鉄”の韓国紙元東京支局長記者 「日常に溶け込んでいる多様な風景」 日本鉄道の魅力を語る
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コロナ禍の落ち着きとともに、海外からの観光客が続々と日本に戻ってきました。東京や京都、大阪など世界的に有名な観光都市だけではなく、鉄道を乗り継ぐローカルな旅を楽しむ人も多いと聞きます。そんな日本の鉄道の魅力を語るのが、韓国大手紙・京郷新聞(ソウル市)の元東京支局長・尹煕一(ユン・ヒイル)記者です。尹さんは取材が縁で、鳥取県の若桜(わかさ)鉄道若桜線隼駅(はやぶさえき)の名誉駅長を務めたことがあるほどの日本鉄道ファン。特派員時代、自ら“乗り鉄”と称して日本全国を駆けめぐりました。そんな尹さんが指摘する日本の鉄道の魅力は「電車が日常に溶け込んでいる多様な風景」にあるといいます。(取材・文=鄭 孝俊)
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鉄道の旅が好きな尹さんが日本で強く印象に残っている路線
2003~2004年と2014~2017年の日本駐在時代、「青春18きっぷ」を購入して日本全国の鉄道の旅を楽しんでいた尹さん。同きっぷが使える期間中はしばしば、東京から普通列車に乗って宮城県仙台市を往復していました。
強く印象に残っている路線を聞いたところ、真っ先に挙げたのが青森県の川部駅と秋田県の東能代駅を結ぶ五能線。「車窓から眺める海岸の景色がとても美しいですし、なによりウェスパ椿山駅下車の黄金崎不老ふ死温泉には驚きました。海岸と一体化した露天風呂なんて見たことがありません。日本の温泉が大自然とともにあることを実感しました」と懐かしそうに話します。
次いで挙げたのが、北海道網走市の網走駅と釧路市の東釧路駅をつなぐ釧網本線。
「真冬に乗車して、オホーツクを望む無人駅の雪景色に見惚れてしまいました。この路線も自然のなかで人間が生きているという日本の原風景のひとつだと思いました」
同線に乗車したのは2012年、日本の無人駅について取材するために来日したときでした。列車内で年配の女性と知り合い、名刺を渡したり、後日、会話をしてくれたことへのお礼の手紙を女性宛に送ったりしたそうです。その後、尹さんはBS-TBSの情報番組「外国人記者は見た! 日本 in ザ・ワールド」(2015~2018年)にレギュラー出演し、日韓の文化の違いなどを解説。そのときスペシャル企画として、尹さんが釧網本線で出会ったこの女性を番組スタッフが探し出し、4年ぶりに対面する企画が放送されました。
「彼女は、私が送った手紙を全部残してくれていました。懐かしい思い出とともに、人生でこんな出来事が起きるのかと感動しました」