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オーバーツーリズム化が叫ばれる日本 観光大国スペインの対応は? 政府観光局に聞いた
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街のあちこちで外国人観光客を目にすることが増えてきました。京都、富士山、箱根――日本を代表する観光地でも、外国人観光客の多さが目に留まります。日本はコロナ禍前の2019年に3800万人の訪日外国人観光客を獲得し、観光立国へ向けて着々と歩み始めていますが、各地で公共交通機関の混雑やゴミ問題など「オーバーツーリズム」も叫ばれ始めました。観光大国として、国の全人口の2倍近くとなる8000万人以上の外国人観光客を受け入れるスペインでは、どのような対応をしているのでしょうか。駐日スペイン政府観光局のハイメ・アレハンドレ局長に伺いました。
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訪日外国人旅行者数は7割まで回復 四季をいかし、地方への分散化を図るべき
日本政府観光局(JNTO)によると、2019年は過去最多の3188万人の外国人観光客が訪れました。その後はコロナ禍で落ち込んだものの、今年8月までの訪日外国人の数は2019年の約7割まで復調しています。そんななか、さまざまな観光地から寄せられているのが「オーバーツーリズム」と呼ばれる、地域住民の生活や自然環境を脅かすほどの過度な混雑です。ここ最近では美瑛(北海道)、京都、富士山、鎌倉(神奈川県)などでオーバーツーリズムを危惧する声が上がっています。
それでは、年間約8350万人(2019年)もの外国人観光客を受け入れている観光大国スペインでは、オーバーツーリズムにどのような対処をしているのでしょうか。
「たとえば、バルセロナには1日約17万人の観光客が宿泊しており、これはバルセロナの人口のおよそ10%です。ただ、実際はもっと多いでしょう。というのも、これはバルセロナ市内で宿泊をしている観光客数にすぎないからです。宿泊しない観光客を含めると1日20万人は訪れているでしょう。スペインにとって観光というのは大きな産業で、GDPに占める割合は12%にも達します。オーバーツーリズムを問題視するのは簡単ですが、そこには必ず良い側面があります。もちろん、議論が必要な側面もありますが、どうしても悪い面ばかりに目が行きがちなのは見直すべきでしょう」
アレハンドレ局長によると、多くの観光客を抱えるスペインでは以前こそ問題が報告されていましたが、古都トレド、美食の街サン・セバスティアン、アルハンブラ宮殿など多くの世界遺産を有するグラナダやセビリアなどで大きなトラブルはないといいます。観光客がもたらす些細なトラブルはあるにしても、地域住民は“それ以上の恩恵に浴している”と理解しているのが大きな要因のようです。
また、ヨーロッパの夏季休暇と重なる7~8月はとくに多くの観光客を抱えがちでしたが、バルセロナやマドリード、セビリアなど有名な観光都市以外にも、さまざまな都市の魅力をPRして分散化させ、時期と場所の一極集中を回避することができているのだそう。
「日本には美しい四季があり、春であればお花見、夏は暑いですが(苦笑)、秋は紅葉、冬は世界に誇れる雪質があります。また、北海道から沖縄県と南北に長い国土は、それぞれの地方の特徴がありますよね。国土の7割が森林で自然に恵まれているのも大きな魅力です。人々はテレビなどで何度も見ている景色を実際に見たい、写真を撮りたいと観光地を訪れると思いますが、ここからは新たに“体験してみたい”と思うものをアピールするのもひとつ。情報収集の方法も多様化しているので、一極集中から脱却していけるでしょう」