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新米と並び、旬の季節が到来 そば打ち職人が教える「新そば」が持つ魅力
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最近、そば店の軒先に「新そば入荷しました」というお知らせを見かけませんか。食べ物がおいしい秋は新米と並ぶ、新そばの季節。でも、そもそも新そばはいつものそばと何が違うのでしょうか。鎌倉・横浜で人気を誇る十割そばの名店「千花庵」の店主でそば打ち職人の鈴木智也さんに、新そばについての知識を教えていただきました。
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秋の3か月しか楽しめなかった、とれたての色と香り
――「新そば」は普通のそばと何が違うのでしょう?
だいたい9月から11月くらいまで、秋の3か月ほどの間に収穫されるものを新そばといいます。今年は少し早かったので8月下旬から北海道で収穫が始まりました。その後、本州、九州と南下しながら収穫が続きます。
新そばの特徴は、鮮やかなウグイス色とフレッシュな香り。そばの実は黒くて硬い殻(外皮)に覆われ、その内側、1層目にある甘皮という部分が香りや粘りの成分を多く持っています。とれたての新そばは、その甘皮部分が干したてで水分量も多く、緑がかった色をしているので、ひくと粉がウグイス色に見えるというわけです。
そばの実は収穫してから時間が経つと熟成され、甘皮は茶色に変わって香りが薄れ、水分量も減ってきます。寝かせたそばの実はまた違った風味を持つようになりますが、香り高いウグイス色が楽しめるのは新そばの季節だけ。旬のものを味わう日本の食文化も手伝って、秋に新そばを楽しむようになりました。
ただ、今では栽培技術が進み、4月下旬から5月の1~2か月を除いた時期であれば、いつでも新そばが手に入るように。それでも、やはり「新そばといえば秋」とされるのは、旬を食べることが粋とされる文化の名残が大きいと思います。