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新米と並び、旬の季節が到来 そば打ち職人が教える「新そば」が持つ魅力

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

二八そばが生まれた背景にある「呼吸」の違い

千花庵の鈴木智也さん【写真提供:千花庵】
千花庵の鈴木智也さん【写真提供:千花庵】

 そばは品種ではなく、栽培される場所=産地によって変わります。場所によって気候が変わるので、同じ品種のそばでも産地が違えば味も違う。さらに、そばは痩せた土地でも育ちやすい穀物だといわれていますが、やはり土作りの上手な生産者のそばはおいしくなります。同じ品種、同じ産地のそばでも、生産者によって味が変わってきますし、保存状態でも味が変わってくる。それくらいそばは繊細なものなのです。

 ちなみに二八そばが誕生した理由を知っていますか。その昔、まだ冷蔵庫がなかった時代に、そば屋の中で最も気温と湿度が安定していたのが、こね鉢を置く台の下(鉢下)でした。そこにそば粉を保存しておいたものの、収穫から時間の経ったそば粉はどうしても風味が薄れ、切れやすくなってしまう。なぜかと考えたときに見つかった答えが、そばは呼吸が浅い=酸化・劣化が早いということでした。

 それに対して、呼吸が深い=酸化・劣化しにくいものが小麦粉だった。そこで小麦粉を混ぜてみると、そばの風味が長持ちするようになりました。こうしてそばの呼吸を補うために小麦粉を混ぜるようになったのが、つなぎの文化の始まりです。そばはグルテンフリーの食材なので、グルテンを含む小麦粉を混ぜることで、切れにくいそばが打ちやすくなるメリットも生まれました。

 ただ、やはり小麦の入ったそばは小麦の香りがします。そば本来の香りや味を楽しみたい方には、十割そばをおすすめしたいですね。

◇鈴木智也(すずき・ともや)
鎌倉と横浜で「千花庵(ちはなあん)」という十割そばの店を営むそば職人。横浜ではそば打ち教室「蕎麦打ちStudio CHIHANA」を開き、初心者でもつなぎを使わないそば粉100%のそば打ちを楽しめる方法を伝授している。江戸時代から約290年続くそばの文化を、この先も290年以上続く文化として後世に残すため、そばの魅力を伝えている。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)