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「路上飲酒は規制すべき?」渋谷で掲げたゼロ宣言、2000人調査で見えたマナー問題

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔

渋谷区の“路上飲酒NO”ハロウィン対策 9月からパトロールも

過去のハロウィンでは、路上飲酒自粛を求める様子も(写真はイメージ)【写真:Getty Images】
過去のハロウィンでは、路上飲酒自粛を求める様子も(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

 ハロウィンの時期は、路上での飲酒を警戒する動きが活発になります。渋谷区は、ハロウィンを念頭に場所や期間を限定したうえで路上での飲酒を禁止する条例を19年に制定しました。今年も条例に基づき駅周辺の路上飲酒を禁止、小売店に酒類販売自粛の要請を行うなどの対策を打ち出しました。

 区の担当者は「以前から『路上飲みが多い』という話があり、週末パトロールで路上飲酒の人数をカウントしたところ、実数としても多いことが判明しました。路上飲酒はポイ捨てによるゴミの散乱や騒音などの問題行為の温床になりうると捉え、ハロウィンを控え、このままでは街の秩序を脅かす事態も生じかねないことを危惧し、迷惑路上飲酒の自粛要請を始めることになりました」と経緯を説明します。

“路上飲酒NO”の流れは、地域住民や行政のみならず、今や小売店にも広がっています。渋谷区でのハロウィン期間中の酒類販売について、コンビニ大手のセブン&アイ・ホールディングスは「酒類の販売については、対象の加盟店と打ち合わせを進めながら、自粛する方向で検討しておりますが、最終的に実際に販売するかどうかは、各店舗が最終判断する形です」と慎重な姿勢を示しました。

 健全な飲酒文化のあり方について、都留教授は「モラルで対処できないケースは条例などで規制する、当面はこの方式で対処していくことになるでしょう」と見解を語ります。

「日本の法律では公共の場所での飲酒を禁止しておらず、路上であれ公園であれ、飲酒行為自体は違法行為ではありません。ただ、法規制はないにせよ、公共の場所での飲酒を積極的に是認する社会的合意があるとも思えない。通勤電車の中でお酒を飲む人がほとんどいないように、人々の判断やモラルによる一定の制約は機能しています。規制の是非はそういった社会的合意があり、それでもうまくいかないときに初めて議論されるべき。ただ、『何が適切か』の意識や基準は今後変化していく可能性があります」

飲酒への社会的基準は今後厳しくなる? 「持続可能で楽しいお酒」を

 2019年の厚生労働省による「国民健康・栄養調査」では、お酒を「飲めない・飲まない」人の割合は55.1%で、2003年の49.4%から増加。すでに国民の過半数はお酒を飲まない生活を送っています。特に、20~30代女性では6割以上にのぼり、男女を問わず40歳未満で増加幅が大きいことから、今後お酒を「飲めない・飲まない」人はさらに増えると予測されます。都留教授は「お酒を飲む人が少数派になった場合、飲酒に対する社会的基準は厳しくなると考えるのが自然」と指摘します。

 健康を害さず、他人にも迷惑をかけずに“持続可能で楽しく”お酒を楽しむことは、コミュニケーションの活性化やリラックス効果などのメリットもあると都留教授。一方で、こうした周知は全く十分とは言えないのが現状です。都留教授は、「飲む・飲まないの選択や飲む場合の適量やマナーなどについて、学校や職場での啓発や教育が求められているのではないでしょうか」と話しています。

※この記事は、「Hint-Pot」とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

◇都留康(つる・つよし)
1954年、福岡県出身。経済学者。1982年に一橋大学大学院経済学研究科博士課程を単位取得満期退学し、一橋大学経済研究所専任講師に就任。1985年に助教授、1995年に教授を経て、2018年に定年退職。現在は一橋大学名誉教授を務める。専門は、労働経済学・労使関係論・人的資源論。近年は経済学の観点から趣味のお酒に関する研究を行う。主な著書に「お酒はこれからどうなるか─新規参入者の挑戦から消費の多様化まで」(平凡社刊)、「お酒の経済学―日本酒のグローバル化からサワーの躍進まで」(中央公論新社刊)など。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム・佐藤 佑輔)