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栗人気を支える影の功労者 日本一の栗の産地・茨城にしか存在しない「むき子」とは
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高齢化の一途 「むき子文化」継承への取り組み
近年は、いわゆるSNS映えする生絞りモンブランなどが人気を集め、東京からもアクセスの良い笠間市内では多くの栗製品を扱う店舗が増加。シーズンの9~10月には、栗を扱う店舗前のあちこちに、長い待機列ができるほど多くの人たちが訪れます。
その栗人気を支える影の功労者であるむき子さん。現在は多くが70~80代の高齢となり、担い手不足はもちろん、栗むきの熟練技の継承も懸念されています。そこで、笠間市では笠間市農業公社と連携し、昨年から新たにむき子さんを育成する講習会などを開始。独自の「むき子文化」と技術を次世代へつなぐ試みがスタートしました。
小田喜さんもその取り組みに期待を寄せています。
「むき子さんの人数もそうですが、技量も段違いでした。昔は10キロ、20キロを1日にむくのが当たり前でしたが、今は5キロくらい。岩間に嫁いだ人は栗むきを教えられ、当時は小さい子がいても家でできる内職でした。でも収入はいわゆる内職よりはるかに多く、生活の糧でもあったはずです。最近は仕事を持っている人が多いのも一因でもあるでしょうね。
講習会を経て新たに始めてくれた人もいますし、男性でも実際にむき栗の技術を親や親戚などから習得して栗むきを行っている方も多くいます。やってみたいという人たちは潜在的に多くいるのではないでしょうか。その取っかかりをうまく作ってもらいたい。昔は収入源だった人が多いでしょうが、今は孫のおこづかいや旅行など自分の趣味に充てている人が多い。若い人たちに地域の伝統技術や文化継承という側面でむき子さんの価値を見出してもらえるかというのも重要でしょう」
栗は生もの 冷蔵して早めに消費することで本来の栗の味を堪能
世界にはヨーロッパグリ、チュウゴクグリ、アメリカグリ、ニホングリの4種類の栗があるとされています。そのなかでも、ニホングリの特徴は渋皮がむきづらいこと。だからこそ、渋皮を残して加工する渋皮煮ができ、また、渋皮をむき、むき栗にすることで、美しくおいしい栗おこわや甘露煮などさまざまな楽しみ方ができるのが特徴です。
しかし、硬い皮に守られている日本の栗は日本の栗は誤解を生んでいることもあるといいます。保存状態や食べ方でおいしさを逃していることも。
「乾物のように扱われることがありますが、栗は生もの。消費者がスーパーマーケットや八百屋さんなど常温で置かれているものを購入し、虫食いがあったり傷んでいたりするものを口にして、おいしくないと言われてしまうのはとても残念です。本来、ほかの野菜や肉と同様に冷蔵し、早く食べれば栗本来のおいしさをもっと楽しめるはずです」
小田喜さんが最もおいしいと言うのは、シンプルなゆで栗。手を加えれば加えるほど、栗の風味は壊れていくといいます。
それはむく場合も同様。前述したように、むき子さんの中林さんはきれいなむき栗にするのに、わずか7回しか刃を入れません。機械や人によっては何度も栗に刃を入れたり、細かく刃を入れたいわゆる“ダイヤモンドカット”は栗が割れやすくなったり、傷みにつながってしまったりすることもあるのだそう。
居間には、むいた栗の鬼皮が山のように置かれていたむき子さんの中林さん宅。「夜までかかる日もあるけど、テレビを観ながら家でできるからね」と笑う中林さん。おいしい栗スイーツに欠かせない美しいむき栗を支える、むき子さんの存在。産地だからこそ生まれた“無形文化”を、次世代につなぐ大切さを再認識しました。
(Hint-Pot編集部)