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共働きで財布が別の両親 父の急死で起きた問題とは 税理士が教える今すぐやるべきこと

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

「財産リスト」は早めの作成を

 直美さんのお父さんには、財産の一覧表「財産リスト」を作成しておいてほしかったと思います。家族を亡くした悲しみのなかで、家中引っかき回して財産探しをするなんて、心身ともに疲弊する本当につらい作業です。

「うちには大した財産がないから」などとおっしゃるならば、財産リストを作るのも大した手間ではないはずです。直美さんのお父さんはまだ若くてお元気でしたから、自分が死んだあとのことなど考えてもみなかったのかもしれませんが、相続はいつ起こるかわかりません。備えあれば憂いなしなのです。

 しかし、自分から自発的に財産リストを作る方は、残念ながらそう多くはありません。でも、何もせずに放っておけば、相続が起こったときに残された家族が困ってしまうのは自明の理。

 とはいえ、親に「財産リストを作っておいてなんて言い出しにくい」という方も多いのが実情ですよね。

 でも、考えてみてください。亡くなった方の財産を家族が探すのと、生きている方が自分の財産をリスト化するのと、どちらが大変だと思いますか? 亡くなった方には何も質問できません。生きている方をその気にさせるほうが楽だと思いませんか?

「財産リスト」作りにはエンディングノートが便利

さまざまな項目が用意されている市販のエンディングノートは「財産リスト」を作成するのにも便利(写真はイメージ)【写真:写真AC】
さまざまな項目が用意されている市販のエンディングノートは「財産リスト」を作成するのにも便利(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 ご夫婦の場合は、話し合ってそれぞれが財産リストを作り合うことをおすすめします。親子の場合は、介護とセットがおすすめです。「親の老後の面倒を誰が見るのか、費用はどうするのかを、将来の相続も含めて親が元気なうちに話し合いたい」と切り出してみてください。

 財産リスト作りには、市販のエンディングノートを利用するのもいいでしょう。どんな財産があるのか、通帳や証書のありかはどこかといったこと以外にも、携帯やパソコンのIDやパスワード、また病気になったときのこと、お葬式やお墓の希望など、家族に万が一のことがあったときに知っておきたいことが網羅されています。

 また、それを書く本人にとっても、自分の財産を把握することは老後資金や過ごし方について考えるのに有効です。財産リストやエンディングノートは、家族のためだけではなく、自分にも役立てることができるのです。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。