Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

子育て主婦発案の冷凍おにぎり 米離れから子どもたちの未来を守りたい…開発の裏側を聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

開発に関わった大貝友美子さんと息子さん【写真提供:生活クラブ連合会】
開発に関わった大貝友美子さんと息子さん【写真提供:生活クラブ連合会】

 農林水産省の発表によると、日本における米の自給率は約97%と高水準を保っています。しかし、国民1人あたりの米の消費量は減少の一途をたどり、1962年に年間118.3キロだったものが、2020年には半分以下の50.8キロにまで低下。それに伴い稲作農家は激減し、1970年には460万戸以上あった水稲収穫農家の数が、2020年には70万戸にまで減ってしまいました。日本人の「米離れ」を食い止めるべく立ち上がったのが、子育て真っ最中の主婦たちです。米離れそのものに加え、未来の食文化に与える弊害を懸念。知恵と力を合わせ、冷凍ミニおにぎり「こむすびちゃん」を生活クラブで開発するに至った背景と、その開発秘話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

未来のため、私たちのための商品開発を目指して議論はヒートアップ

「生協」の愛称で親しまれている生活協同組合。「生活クラブ生協」では、組合員がさまざまな暮らしの課題を解決するため商品開発も行っています。

 開発メンバーのひとり、大貝友美子(おおがい・ゆみこ)さんは「生活クラブ東京」の組合員で、今回の新しい商品の開発プロジェクトに初参加。3人のお子さんを育てながらのプロジェクト参加は大変な面もありましたが、大貝さんには強い思いがありました。

「米の生産量が減っている。米農家も減っている。そうした状況を食い止めなければと、強く思いました。米がなくなることは、日本人にとって大きな痛手です。このまま米農家が減ってしまえば、いつか、米すら輸入に頼らなければならない事態になりかねません。なんとかそうした未来を回避したくて、今回のプロジェクトに参加しました」

 今回のプロジェクトは、生活クラブの組合員と提携生産者「JAなすの どではら会」がともに栽培方法、農薬回数、価格などを話し合って作る共同開発米「那須山麓米」を使用し、米の利用を促進することを目的に発足しました。2年にわたるプロジェクトの出だしで、決定していたのはただそれだけ。参加者(2021年次13名、2022年次9名)は3つのチームに分かれ、自分たちが考えた商品の実現化に向け、作りたい、買いたいと思えるアイデアを出し合ったといいます。

「さまざまな案が出たなかから候補を絞っていき、そのうちのひとつが『冷凍ミニおにぎり』でした。

 私はどうしても『おにぎりは家で作るもの』という意識があって……。家で作れるものをわざわざ買う人がいるのだろうか? 本当に必要なのは、非常食では? といった面からも議論を重ねました」

「こむすびちゃん」に使用している米を稲刈りする組合員【写真提供:生活クラブ連合会】
「こむすびちゃん」に使用している米を稲刈りする組合員【写真提供:生活クラブ連合会】

 生活クラブは、原材料の調達から組合員の手元に商品が届くまでのすべての工程について情報公開できることを前提に、独自の基準を設けて商品開発をしています。そのため利用できる工場が限られ、候補のなかで実現が可能だったのは、おにぎりだけでした。

「需要があるか、不安で仕方がありませんでした。具材についても、たんぱく質をとれるものにしようと意見を出し合い、豚ゴボウきんぴら、鶏そぼろとコーン、サケと枝豆、梅しそなどさまざまな案が出たんです。しかし、子どもが食べやすく、生活クラブの基準に合うものとして、ワカメ、サケ、ゴマの3種の混ぜ込みに決定。普通すぎるのでは? という思いがなかなか払拭できませんでした」

試食などを重ねる開発チームのメンバー【写真提供:生活クラブ連合会】
試食などを重ねる開発チームのメンバー【写真提供:生活クラブ連合会】

 原材料選びそのものも、一筋縄ではいかなかったと大貝さんは振り返ります。

「サケは国産のものを使用することですぐに決定しましたが、ワカメは提案された外国産と国産が混ざったものにほぐしやすくするための添加物が使用されているなど、私たちの納得のいくものではありませんでした。

 ちょうどその頃、生活クラブ東京の地域のイチオシ品として重茂(おもえ/岩手県宮古市)産のワカメについて生産者から市販品との違いを学んだところだったので、そちらを使いたいと要望しました。

 原材料費が高くなる、肉厚だから細かく加工できないなどのハードルはありましたが、子どもたちに食べさせるものだからこそ、生活クラブが長年食べ続けてきた重茂産のワカメに妥協せずこだわりを貫きました」