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どうぶつ

「家族としてずっと大切にする」誓約を交わす保護猫の譲渡 しがみついてきた黒猫に抱いた思い

公開日:  /  更新日:

著者:峯田 淳

移動中はおとなしく…しかし、先住猫との対面前に逃亡!?

「次は考えられない」。そう思いながら参加した譲渡会で、運命的な出会いを果たした黒猫【写真:峯田淳】
「次は考えられない」。そう思いながら参加した譲渡会で、運命的な出会いを果たした黒猫【写真:峯田淳】

 黒猫は譲渡会場ではあんなに大騒ぎしていたのに電車の中ではおとなしくしていました。具合でも悪くなったのかと思い、網目の間から覗き込むと大きな目をクリクリさせて、こちらを見ています。

「この猫で良かったのかなあ」と言いながら、バッグの外からツンツンすると目をキョロキョロさせます。

「今はおとなしくしているけど、やんちゃな気もするけど」とゆっちゃん。

 家に着いてバッグから出してあげると、先住猫たちの匂いがするのか、身をすくめて警戒しています。2階にいる先住猫のガトーとクールボーイを呼んでこようとしているうちに黒猫は姿を隠してしまいました。

「どこか、いなくなっちゃったよ」と言うと、ゆっちゃんは「まさか玄関から逃げた?」と慌てています。ガトー、クールボーイとご対面の前に、逃亡? 玄関には脱走防止の柵もあるのに、探してもどこにもいない。

「玄関のドアはちゃんと閉めた? すばしっこく逃げたとか」

 しかし、しばらくするとかすかにミーミー鳴いている声が聞こえてきました。どこかにいる。耳を澄まして床を這って探ってみると、玄関付近からの声でした。玄関と靴箱の間にある小さな隙間のようです。

 でも、「おいで!」と声をかけても、なかなか出てきてくれません。

 そこで、しばらく放っておき、猫じゃらしの音をさせるなどして様子を見ていたら、そろそろと隙間から顔を出し、こちらに近づいてきました。捕まえて、抱っこして、頭を撫でてやりました。ミーミー。まだ本当に子どもです。

 その声を聞きつけて、“兄”たちが2階から降りてきました。2匹とも余計な闖入者がやってきたという面持ちです。

(峯田 淳)

峯田 淳(みねた・あつし)

コラムニスト。1959年、山形県生まれ。埼玉大学教養学部卒。フリーランスを経て、1989年、夕刊紙「日刊ゲンダイ」入社。芸能と公営競技の担当を兼任。芸能文化編集部長を経て編集委員。2019年に退社しフリーに。著書に「日刊ゲンダイ」での連載をまとめた「おふくろメシ」(編著、TWJ刊、2017年)、全国の競輪場を回った「令和元年 競輪全43場 旅打ちグルメ放浪記」(徳間書店刊、2019年)などに加え、ウェブメディアで「ウチの猫がガンになりました」ほか愛猫に関するコラム記事を執筆、「日刊ゲンダイ」で「前田吟『男はつらいよ』を語る」を連載中。