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仕事・人生

伝統工芸の藍染を現代にも 父から受け継いだ工房を切り盛りする女性藍染職人の奮闘

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

伝統工芸の藍染「紐絞り」。京都ほづ藍工房・2代目代表の吉川佳代子さん【写真提供:吉川佳代子】
伝統工芸の藍染「紐絞り」。京都ほづ藍工房・2代目代表の吉川佳代子さん【写真提供:吉川佳代子】

 ウェブデザイナーとしてウェブ制作に携わるなか、突然訪れた父との別れ。家業である藍染工房を継ぐ覚悟もできないまま、京都ほづ藍工房の2代目として、吉川佳代子さんは伝統工芸の世界へ飛び込みました。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。後編では父の死後、跡を継いだ京都ほづ藍工房での奮闘について伺いました。

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結婚を機に一時は北海道へ転居 離婚後に実家で藍染修業

 紙からウェブへ。IT業界が盛り上がりを見せていた2000年代の初め、ウェブ制作会社に3年勤めたあと「父と一緒に、父の製作した藍染アイテムのオンラインショップを作りたい!」と独立。これまであまり関心を持っていなかった藍染でしたが、ウェブサイトやオンラインショップの制作に携わることで、魅力を知ることになりました。

 そんな折、当時おつきあいをしていた男性との結婚が決まり、まずは結婚資金を貯めるためることに。工房のウェブ制作をいったんストップして、プロバスケットチーム・京都ハンナリーズのホームページ制作に携わることになったそう。選手紹介ページやポスター制作、キャラクターデザインなどの仕事をしながら、これまでとは違うウェブ・DTP・システムデザイン制作の経験を積んだといいます。

 その後、結婚・妊娠・出産を経て、結婚相手の地元である北海道へ転居。しかし、その日々は長く続きませんでした。

「自分の夢も諦めて北海道についていったのですが……。元夫からのDVやモラハラに遭い、子どもを連れて実家に戻ることになりました」

 実家に戻ったときに、父は新たな挑戦を行っていました。それまでは購入した藍の染料を使って藍染をしていましたが、「京都の藍(京藍)を育て、自分で染料化して染めていきたい!」と思ったそうで、畑を借りて、京藍を育て、染料にして製品化。60歳を超えてもなおパワフルすぎる父の姿を見て、吉川さん自身も励まされ、再び一緒に工房を切り盛りするようになり、父親の元で実際に藍染の職人としても修行を積んだといいます。自由な父に振り回されながらも、ウェブと藍染を通して親子でつながってきた約4年。突然、父が他界しました。

「染めること自体に関してはしっかりと教えてもらっていたのですが、まだまだ多くの技術を教えてもらい切れていないところがあり、もっと教えてもらいたかった」という思いがあったそうです。戸惑う吉川さんを助けてくれたのは、工房のスタッフや父の染め仲間でした。「私が困っていたら、父の周りにいたみんなが色々な技術を教えてくださり、人手が足りない時に手伝っていただくなど本当に助かりました」と、父が大切にしていた仲間と藍染め工房。父の遺志を継ぐ意味でも、吉川さんは工房を継続していく決意を新たにしました。

父の逝去から2年 工房の2代目として「自分色」に

「先代が亡くなって2年。藍染め歴6年と経営者としても、藍染職人としてもまだ初めの一歩を踏み出したばかり」と吉川さんは言います。スタッフや父の染め仲間、たくさんの人とともに頑張れていると振り返りました。

 当時について改めて尋ねてみると、「本当に大変でした」と吉川さん。あまりにも突然のことだったため、父親がどんな仕事を入れていたのか、把握しきれていない状況でした。スタッフ一同、想定内のものに関しては対応。それ以外のものは「連絡待ち」にし、連絡が入ったら即時対応するということで、ひとつずつやるべき仕事をこなしていったといいます。

 それは工房の人気コンテンツのひとつ、藍染体験についても同様でした。

「父がいた頃から藍染体験もやっていたのですが、当時の私は父の後ろでサポートすることはあっても、自分が前に出て講師をやることはなかったので、自宅や車の中で、どうやったら体験者に伝わりやすいかを何度も試行錯誤して練習しました」

 吉川さんの講師の評判は上々。「藍染体験の仕事もやっていける」と自信につながっていったといいます。

「父がやっていたときは年間で300~400人ぐらいが藍染体験に参加されていたんですが、今年はすでに1200人を超えています。コロナが落ち着いたこともありますが、自分なりに工夫を加えたり、予約しやすいシステムに変えたり、リピート率が高くなったことや団体のお客様に来ていただける仕組み作りを行った結果がつながってきているのかなと。実力もついてきて、最近は自信が湧いてきました」

 そして今年の5月、いったんは制作をストップし断念した工房のオンラインショップ「京藍華-kyouaika-」がついにオープン。「やっと夢を叶えることができました。多分、あの頃はまだやるべきときではなかったのかもしれないですね。藍染のことも、経理や事務的なことも何もわからなかったですから」と、笑いながらうれしそうに語ります。