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仕事・人生

伝統工芸の藍染を現代にも 父から受け継いだ工房を切り盛りする女性藍染職人の奮闘

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

藍染という伝統工芸を現代に、そして次の世代に伝えるために

 藍染は、ほかと同様、継承していかなければいけない伝統工芸のひとつです。吉川さん自身もそれを考えているといいます。

「先代のときに売れていた柄は古典柄や伝統的なもので、価格帯も高くご年配の購入者が多かった印象です。若い方にも藍染を知ってもらって、普段使いしていただけるようなものが作れないか。そんなことを常に考えていました」

 ウェブデザイナーの経験をいかし、考えたのがオンラインショップでした。25歳から45歳くらいの女性をメインターゲットにしたサイトには、藍染の洋服やピアス・イヤリングなど、普段使いとして身につけられるような華やかなアイテムが展開されています。

「たとえば、これまでの藍染のワンピースはふわっととしたデザインが多かったのですが、それだと現代女性のニーズには合わないのではないかと感じ、体のラインにぴったり沿うようなデザインの洋服を取り入れたり、現代女性がどんなものを欲しがっているのかをリサーチしたりしたうえで、できる限り抑えた価格帯で提供できるアイテム作りを心がけています」

 さらに、子どもたちに地域の伝統工芸を知ってもらおうと、地元の保育園生や小学生向けに藍染体験も開催しています。

「体験が思い出になってくれているといいですよね。いつか大人になって子どもの頃にやったという記憶があると、そのうちの誰かが藍染工房に来て、継いでくれるような人がいてくれたらいいなあなんて思っています」

 吉川さんには一人娘がいますが、継いでもらいたいという気持ちはないのでしょうか。尋ねてみると、「あまりないですね」といいます。

「めっちゃ大変な仕事ですごく忙しいので、娘が入ってきたら、きっとけんかもするでしょうし、仲が悪くなってしまうかもしれないなと。だから、私からは娘を誘わないでおこうと決めています。娘がある程度大人になって、いろんな人生経験を積んでから『一緒にやりたい』って言うことがあれば、『ちょっとやってみる?』ってなるかなと思いますけど」と、父親と自分の姿を重ね、複雑な心境を語りました。

 事業継承して3年目。「いろいろなことに挑戦できて、今が一番、人生で幸せな時期を過ごしているのかも」と語る吉川さん。藍染をより多くの人に知ってもらうための奮闘は、これからも続きそうです。

◇吉川佳代子(よしかわ・かよこ)
京都府生まれ。両親ともにデザイン関連の仕事をしていたことから、絵を描くことが好きだった幼少期を経て、ウェブデザイナーに。父が立ち上げた藍染工房を手伝っていた最中、父が突然の他界。急遽、家業を継ぎ、京都ほづ藍工房の2代目代表を務めている。現代人に受け入れられる藍染の商品を生み出すとともに、日本の伝統工芸のひとつである藍染を体験できる「藍染体験」は、日本人だけでなく外国人旅行者にとっても人気のコンテンツとなっている。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)