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「母乳売ります、を買わないで!」 注意喚起にネット騒然 「まさか売る人がいるとは…」 専門家は警告

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

「粉ミルクでもいい」 赤ちゃんを育てる上で大事なことは

 一方で、この問題は売り手側だけのことではありません。赤ちゃんへの危険を承知で、購入を決断する買い手側にはどのような背景があるのでしょうか。

「通常ならありえないことが起こってしまっていると感じます。お母さんがそこまで精神的に追い詰められているということです。現に粉ミルクだけで育てているお母さんはたくさんいますよね。母乳が出なくて医学的に問題となることはないのです。それなのにお母さんが“母親失格”だと思い込んで自分を責め、とうとう判断能力を失って購入に至ってしまう。『どうして母乳をあげないの?』と責める人が周囲にいたりして、お母さんが正常な判断ができなくなって買ってしまうのです」

 日本にはかつて「母乳神話」がありました。完全母乳であれば歓迎され、粉ミルクでは発育に影響するという風潮もありました。

「お母さんが悩んだり迷ったりするのは当然ですが、大切なのは母乳を与えることではなくて、我が子を愛することなんですね。母乳が出ないなら、出ない。つらいことかと思いますが、それをお母さん自身も受け入れることが大事です。ネットで全く信用できないものを買うのではなく、しっかり目の前の我が子を見つめて、そして声をかけて、抱きしめてあげる。そのほうがずっと赤ちゃんのためになります」

 第三者からの提供母乳を利用する手段としては、「母乳バンク」という制度があります。しかし、これは、条件があります。

「母乳バンクで低温殺菌したミルクはドナーミルクと言うのですが、ドナーミルクを提供する対象はNICU(新生児集中治療室)に入院している医学的に必要な赤ちゃんだけです。そして、担当医がこの赤ちゃんにはドナーミルクが必要だという判断をした場合のみになっています。例えば、元気な赤ちゃんで、お母さんのおっぱいが出ないから買いたいというのは現時点ではできません」

 ただ、ここにも母乳を求める声は届いていると言います。「実際、そういうお問い合わせが時々あるのです。申し訳ないのですが、ドナーミルクの売買はしないということで、厚労省やこども家庭庁とずっと一貫してやっています」と、説明しました。

 ネットの普及によって、欲しいものが簡単に手に入ってしまう環境があります。便利になった分、利用法を間違えると、取り返しのつかない事態を引き起こす可能性があります。

 水野さんは、「我が子に母乳をという思いにとらわれすぎずに、粉ミルクでもいいから、我が子を抱きしめてあげるほうが赤ちゃんにとってはプラスになるでしょう」と話し、愛情表現の大切さを訴えました。

□母乳バンクは低温殺菌器の導入に支援を呼びかけている

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)