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未成年の子どもがいる家こそ遺言書を用意すべき理由 相続人は誰にすればいい? 税理士が解説
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遺産相続と聞くと、ご高齢の人の話……と思いがちですが、年齢の順に起こるとは限りません。30代や40代、50代の働き盛りで亡くなることだってあり得ないとは言い切れないのです。そんな若い世代の相続で問題になることが多いのは、相続人のなかに未成年の子が含まれている場合の「遺産分割協議」。今からできることはあるのでしょうか。豊富な実務経験がある税理士で、マネージャーナリストの板倉京さんが解説します。
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夫の急死で息子と遺産相続をすることに
外資系コンサル会社に勤めるビジネスマンの鈴木隆さん(仮名・46歳)は、ある日突然倒れて帰らぬ人となってしまいました。妻の美保さん(仮名・43歳)は専業主婦。子どもは一人っ子で、私立高校に通う16歳の男の子がいます。鈴木さんの年収は約2000万円と高く、自宅マンションと金融資産を合わせると1億円ほどの資産を持っていました。
まず、相続人が2人(妻と子1人)いる場合、4200万円以上の財産があると相続税がかかります。1億円もの財産があった鈴木さんの家族は、相続税の課税対象者となります。しかし、一家の大黒柱を失い、これから息子さんの学費もかかるとあっては、できれば相続税など払いたくありません。
税金に詳しい人なら、「妻が全部相続すれば、1億6000万円まで相続税がかからないんじゃないの?」と思われるかもしれません。もちろん、それは間違いありません。でも、子どもが未成年の場合、そう簡単にはいかないのです。
未成年者と遺産分割協議をする場合は特別代理人が必要に
被相続人の死後、誰が財産をもらうかを決める「遺産分割協議」は法律行為で、未成年者が単独で行うことはできないと決められています。相続人のなかに未成年者がいる場合は特別代理人を立て、その代理人が未成年者の代わりに遺産分割協議をすることになります。ちなみに、2022年4月から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたため、現在は18歳未満の子が未成年者ということになります。
特別代理人には誰がなってもいいのですが、遺産分割協議の場合、財産を分け合う立場である相続人がなることはできません。遺産を分け合う相手方である母親が子どもの代理人になるのは「利益相反」であり、母親ひとりで勝手に財産の分け方を決めるのであれば子どもの権利が守れないというのです。
つまり、鈴木家の場合、母親である美保さんが息子さんの特別代理人になることはできません。また、隆さんと美穂さんの子どもは1人のため、特別代理人をつける場合は1人ですが、子どもが複数いる場合は子ども1人につき1人の特別代理人が必要になります。
この話をすると、「子どものためを思わない母親なんていないんじゃないの? お母さんが代理でいいよね」という人がいますが、法律ではそれは認められないのです。