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不妊治療の子連れ受診、「ホントに無理」との声が続出 難しい解決策 医師「アンタッチャブルな部分」

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

解決策は託児所の併設も… 「都内では難しい」理由

子連れの不妊治療はハードルが高くなる(写真はイメージ)【写真:写真AC】
子連れの不妊治療はハードルが高くなる(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 子連れによる不妊治療はハードルが高い印象です。ただ、これらの問題を解決する方法がないわけではありません。杉山産婦人科新宿では託児所を併設し、待合室とフロアを分けて運営しています。

「子どもがいることが理由で第2子を作れない人がいっぱいいますから。子どもを病院に連れてこれないから受診できない人がいるんですよ」

 新宿では1日300人超の患者が訪れます。そのうち、第2子以降の子どもを望む母親は「3~4割くらい」とかなりの割合を占めています。

 ただし、託児所は、どの不妊治療クリニックにも存在するものではありません。

「理想は託児所があったほうがいいですよ。でも、都内はついているところを探すほうが難しいんじゃないですか」

 どういうことでしょうか。

 杉山理事長によると、場所の確保に加え、運営の問題があるとのことです。家賃だけで月数十万円、さらに、保育士を雇う必要があります。子どもが遊んでいても体調の変化を含め、常に目を配らせなければなりません。杉山産婦人科新宿の託児所利用料は、時間にかかわらず1回1000円(税別)ですが、それだけではとてもまかないきれないのが現状です。

「かなえられないんですよ」 「子どもNG」がクリニックの共通認識

第2子以降を望んでいる家庭も多い(写真はイメージ)【写真:写真AC】
第2子以降を望んでいる家庭も多い(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 託児所のほかには、前述のように診察フロアを分けたり、子連れかそうでないかによって診療時間を分けるという方法もあります。また、患者側は子どもを一時保育に預けたり、ベビーシッターを利用するという方法もあるでしょう。

 ただ、前者は都内ではスペースの問題があり、後者は時間的な制約があります。不妊治療は、治療の種類によって、通院日が突発的に決まることがあります。また、体外受精では採卵のため早朝に通院することも珍しくありません。子どもを預けたくても、保育施設が開いていないこともあるでしょう。都度、預け先を見つけることは親側にとって大きな負担になります。潜在的な受診ニーズがある一方で、通院の条件を満たすクリニックが少ないため、第2子以降を希望しても受診を控えている母親が相当数いる実態が浮かびます。

 杉山理事長は、取材中、「これは難しい」という言葉をたびたび使いました。

「アンタッチャブルな部分ですね。課題になってない。かなえられないんですよ。もう物理的に場所もない、人材もいない、さらにお金もかかる。僕の知っている中では子どもOKなクリニックはないですね。それが普通なんですよ。だから課題になっていないです」

 杉山産婦人科新宿の託児所の利用率は1日20組ほど。1度に預かれる人数は決まっており、「なるべく受けてと話しているんですけど、満員で断っている日があるかもしれない」と杉山理事長は明かします。都内では院内に併設しなくても、近隣の託児所や病院と連携して託児サービスを取り入れているクリニックもあります。いずれにしても、第2子以降を望むのであれば、年齢や時間との闘いもあり、切実な課題です。

「いい方策があれば、不妊治療やる人は今よりは増えるかもしれないですね。子どもを預けられないから(治療を)やっていない人って少なくないと思いますよ」と杉山理事長は結びました。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)