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日本では当たり前の通勤手当 英国で働き始めた女性が陥った落とし穴とは
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海外で暮らしていると、日本の素晴らしさや恵まれている部分に気がつくことがあります。ひょんなことから英国に移住、就職し、海外在住歴6年を超えたMoyoさんが外国暮らしのリアルを綴るこの連載。第14回は、英国で働いて知った日本のうれしい福利厚生についてです。日本では考えられない、英国での逆転現象とは。
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家賃と交通費のちょっとつらい落とし穴
新卒で日本の企業に就職し、5年勤めていた私にとって、英国でめでたく仕事をゲットできたのはいいものの、最初は福利厚生の違いに戸惑うことがありました。とくに交通費(通勤手当)が支給されないのは、なかなか懐に痛い問題でした。
日本では会社が定期券代をカバーしてくれるのが一般的でしょう。会社によって距離や金額の上限など条件はあるものの、「新幹線通勤」なんて言葉があるほど。少し遠く離れたところや郊外に家をかまえても、通勤にかかる交通費の心配をする必要がありません。
もちろん通勤手当は法律で義務付けられているわけではないので、日本でも企業によっては支給されない場合もありますが、英国ではよっぽどのことがない限り通勤手当が出ません。私の知っている限り、Cレベルクラス(CFOやCMOなど、肩書きの頭にCがつく役員の人々)やそれに近しい人々のみでした。
ここで問題になるのが、家のレント(家賃)と交通費のバランス。家探しの回でも少し触れましたが、シティセンター(ロンドン中心部)から離れれば離れるほどレントは下がるので、「職場から遠くても、安いレントなら家計を助けてくれるしいいかも」とつい思ってしまいます。
Zone 5というシティセンターから電車で70分ほど離れたところに住んでいたとき(ロンドンはZone 1から9までエリアが区切られており、シティセンターが1です)、1日往復10ポンド(約1850円、1ポンド=185円で換算)近くをかけて、週5日オフィスに通っていました。
英国の電車は、時間によってオフピークとピークの2種類の料金設定があります。そして、通勤時間はピーク料金となり基本的に高くなる、ということを家選びの時点で考慮しなくてはならないのです。
交通費だけを単純計算すると、10ポンド×5日間×4週間=200ポンド(約3万7000円)となります。この交通費に家賃を足すと、シティセンター近辺の物件に住むのと支出はあまり変わらず、ただ通勤時間が長くなりストレスがかかるだけという逆転現象に気づきました。
給料からこれらの金額を自動的に引いて考えないといけないとなると、やはり虚しいですよね。いっせいにリモートワークに切り替わったコロナ禍の時期だけは、この費用が浮くようになり、とても助かったのを覚えています。