海外に永住する日本人は年々増加しています。移住するとなれば、必要なのが仕事。日本とどのようなところが違うのか、気になりますよね。ひょんなことから英国に移住、就職し、海外在住歴6年を超えたMoyoさんが外国暮らしのリアルを綴るこの連載。第15回は、英国のランチ事情にフィーチャーします。日本には安くておいしい外食がたくさんありますが、英国ではどうしているのでしょうか。

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空気を吸うだけでお金がかかるロンドン

　しっかりと働くために欠かせないのがごはん。福利厚生の一環として、シリコンバレー系の会社が従業員に無料で豪華な食事を提供する食堂が有名かもしれません。

　ですが、英系会社もなかなか負けていませんよ。朝食にホットミール（オムレツなど）をビュッフェ形式で楽しめるところもあれば、シリアルやクロワッサン、フルーツなど簡単なものを用意してくれる会社もあります。

　ランチには、提携しているデリバリー会社から好きなメニューを毎日選び放題というところも。これらはすべて無料です。

　私が所属していた会社は、簡単な朝食だけ支給してくれるタイプでしたが、それだけでもとても助かっていました。というのも、なんといっても物価が高くなりすぎているのです。ニュースで聞いたことがあるかもしれませんが、英国のインフレーション率はおよそ6.7％（2023年9月時点）。

　この事態を「ロンドンは空気を吸うだけでお金がかかる」と表現した友人がいたのですが、まさにその通り。この言葉が意味するところを少し掘り下げたいと思います。

日本と同じ生活を求めようとすると日本の2倍かかる!?

　まずは、私が日本で働いていたときの一日のお金の流れを振り返ってみたいと思います（6年以上も前なので、今のほうが物価が少し高くなっていると思いますが……）。

　朝はコンビニエンスストアに寄って、コーヒーとおにぎりや菓子パン、ヨーグルトといった朝食を買って出勤（約400円）。お昼はほぼ外食かコンビニ（約1000円）。午後や夕方になって仕事に疲れたら、お菓子や飲み物を買いにちょっとそこまで（約300円）。

　合計は約1700円の出費。みなさんもこれくらい、ついかかってしまうのではないでしょうか。

　では、英国ではどうでしょう。私はよくコーヒー1杯（レギュラーサイズ）を買って出社していたのですが、昔は2.7ポンド（185円換算で約500円）くらいで買えたものが、2023年になってからは3.5ポンド（約650円）がデフォルトに。さらに、パンやヨーグルトなど簡単な軽食を買ってしまうと、お会計は約8.5ポンド（約1550円）近くになり 、朝食からかなりの出費になってしまいます。

　そんな経済事情は、お昼も同様です。ロンドンには小さな出店が集まったフードマーケットがあちこちにあります。そこでできたてのごはんを買おうと思うと、どんなに安くても8ポンド（約1500円）を出さないと何も買えなくなってしまいました。大好きなラーメン店もどんどん値上がりし、今では13ポンド～（約2400円～）が普通に。立派な高級食です。

　数年前まではフードマーケットの食事も5～6ポンドから手に入っていたので、「今日は外食しちゃうか」と、つい軽い気持ちで生きていましたが、あっという間に遠い過去に。

「それならスーパーマーケットで安いものを買えば良いじゃないか」と思うかもしれませんが、こちらも物価高は同じ。昔は、シンプルなサンドイッチと飲み物、デザートがセットで5ポンド（約925円）で買えていたものが5.5ポンド（約1018円）に、3点で7ポンド（約1295円）だったお惣菜が8ポンド（約1480円）になるなど、あちこちで値上がりしています。

　もちろん、味とボリューム、値段が比例しているならしぶしぶでも納得できるのですが、そこは英国。このクオリティでこの値段？　というのが多いのもやはり難点です。もちろん、おいしいごはんもなかにはありますが！

　そして、おやつのお菓子も値上がり。大好きなチョコレートやクッキーがじわじわと高くなり、つい買うのをためらってしまうことも。おやつを約400円として、これらをざっと合計してみると約3450円。単純比較できませんが、大ざっぱにいっても、日本の約2倍出費していることがわかると思います。

　110円で買えるコーヒー、メインから飲み物、デザートまで買っても1000円を超えないコンビニのお昼ごはん、1000円ちょっと出せばお腹いっぱい食べられるお得なランチセット。なにより、すべてがおいしくてハイクオリティな日本を知っている身としては、やはり「なんでこんなに高いんだ！」となってしまうのです。