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有毒ガスが発生することも SNSにあふれる危険な掃除テク プロが警鐘

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

教えてくれた人:伊藤 まき

一見、便利なライフハックも注意が必要(写真はイメージ)【写真:写真AC】
一見、便利なライフハックも注意が必要(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 SNSには料理や掃除、育児など日常に役立つライフハックがあふれています。しかし、なかには用途以外の間違った使い方で、事故を招く危険性がある場合も。クリンネスト2級の資格を持つ、掃除のプロ・伊藤まきさんは「そうしたSNSの情報が、すべて『正解』だと妄信することはやめましょう」と警鐘を鳴らします。具体的にどのような危険があるのでしょうか。

 ◇ ◇ ◇

人体被害が懸念されるケースも

 SNSで近年見かけることが多いのが、トイレやお風呂、キッチンなど、水回りの汚れを落とすライフハック。一見すると簡単に、きれいになるように思えますが、危険極まりない情報も。

 たとえば、「塩素系洗剤で配管掃除をしながら、クエン酸でシンクまわりの掃除を行うと時短になる」という方法。塩素系漂白剤と酸素系洗剤は混ぜると有毒ガスが発生するおそれがあることは広く知られています。しかし、クエン酸は洗剤と大々的に書いていないこともあり、酸性の洗浄剤だと認識していない人もいるようです。掃除中に混ざり合えば、人体被害が懸念されます。

 ほかにも、「電子レンジで重曹水をチンすると汚れが落としやすくなる」という方法は広く紹介されています。しかし、多機能レンジの場合は、故障の原因になることも。

 さらに、まったくの出まかせ情報も後を絶ちません。「重曹とクエン酸を混ぜると汚れが落ちる」という情報は、アルカリ性の重曹と酸性のクエン酸を混ぜても、中和してしまうため意味がありませんし、「壁紙に直接クエン酸スプレーなどを吹きつけて掃除すると拭き掃除が楽になる」というのは、壁紙にシミを作る原因になるので、スプレーは雑巾側に吹きつけたほうがいいでしょう。

鵜呑みにすると家を傷つけてしまう可能性も

 また、誇大表現がされているテクニックには気をつけたほうがいいでしょう。「どんな汚れも落ちる!」など、魅力的な表現が使われている場合もありますが、シンクや浴槽、トイレなどはメーカーによって材質やコーティングの種類が異なります。そのため、SNSの情報を鵜呑みにして、同じテクニックをそのまま使ってしまうと傷めてしまう結果になりかねません。

 とくに注意してほしいのは、築年数が新しい家。お手入れがより楽なように進化しているので、古い情報を参考にして同様の手入れを行ってしまうと、汚れないように施されたコーティングがはがれてしまったり、細かな傷がついて意図せず劣化させてしまったりすることがあります。

 失敗しない掃除をするためには、SNSを参考にするのではなく、メーカーの取扱説明書に書かれた「お手入れ方法」をよく読みましょう。取扱説明書には「やってはいけない」掃除方法が書かれています。取扱説明書を失くしてしまった場合は、メーカー名+品番でネット検索をかけてみてください。よほど古い型番のものでない限り、情報を得ることができます(情報がない場合は、メーカーに直接問い合わせるといいでしょう)。

「掃除」は快適に暮らすために欠かせないものであり、家を長く守るために必要なこと。エビデンスのない情報を鵜呑みにせず、正しい情報を元に行ってください。

(和栗 恵)

伊藤 まき(いとう・まき)

整理収納アドバイザー1級、クリンネスト2級。ホテル清掃員や国鉄系レストランの厨房、内装会社、デパートの搬入搬出などで経験を積み、出版社に入社したのち独立。掃除しながら片づける「整理収納のプロフェッショナル」として各種ウェブメディアで記事を手がけ、掃除本の編集ライターとしても活躍中。
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