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「源氏物語」は現代に似ている? 1000年以上も愛され続ける理由とは
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源氏物語が描かれた時代は現代に似ている?
――源氏物語が執筆されたのは平安時代の中期です。当時はどんな時代だったと考えられますか。
「文化的な面でいえば、いわゆる『日本らしさ』といった日本文化の起源は、この時代にできたのではないかと思うことが多くあります。また政治的な面でいうと、この時代は大きな戦乱がなかったので、どちらかといえば現代に近いのではないかと考えることができます」
――「現代に近い」とはどういうことでしょうか。
「たとえば、男の人が恋人を思って涙を流すなど、男性が泣く場面が物語には多く出てきますよね。男はこうありなさい、女はこうありなさいという概念は、おそらく戦(=戦争)に関係していたのではないかと考えられるので、そこから社会的な男女の区分けができてきたのではないかと思います。しかし平安時代には戦がなかったので、男性でも涙を流すシーンが当たり前に出てきますし、化粧をしたり、中性的な美しさが描かれていたりしているのではないかと考えることができます。もちろん男女の性差がないわけではないのですが、戦があった時代となかった時代を比較すると、平安時代は戦のない現代に共通する部分があるのではないかと見ています」
――源氏物語の時代と今が似ているとは、興味深いですね。
「当時は摂関政治でした。藤原氏が自分の娘を妃にして、帝との間に生まれた子どもを次の天皇にすることで政権を握るので、天皇の母親が発言権を有することになります。源氏物語のなかにも弘徽殿の女御(朱雀帝の即位によって皇太后になった女性)など、政治の表舞台に出てくる強い女性がいますし、ほかの時代と比較すると女性が強かった時代、権力を持つことができた時代といえるのかもしれないですね」
――だから現代の女性にも共感できる部分が多くあるのですね。
「そう思います。自分が仕えている妃が力を持つことができるわけですから、女房集団の文化があれだけ華やいだのだと思います。サロンを形成して、そのなかで文芸的な活動をして、源氏物語を始め、さまざまな作品が生まれていったのです。実際に源氏物語を書いた紫式部は一条天皇の中宮であった彰子に仕えていましたからね」
1980年、岐阜県生まれ。明治大学大学院博士後期課程修了。博士(文学)。明治大学文学部助教・講師、日本学術振興会特別研究員(RPD)を経て、2018年より椙山女学園大学国際コミュニケーション学部講師、2021年からは准教授に就任。専門分野は古典文学や歴史物語、源氏物語で、平安時代の文学作品と歴史との関連性について研究を続けている。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)