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単なる恋愛物語ではない 「源氏物語」の本当の魅力とは 専門家に聞いた

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

紫式部が参篭して「源氏物語」の須磨・明石の二帖を執筆したとされる滋賀県石山寺に建つ紫式部像【写真:Hint-Pot編集部】
紫式部が参篭して「源氏物語」の須磨・明石の二帖を執筆したとされる滋賀県石山寺に建つ紫式部像【写真:Hint-Pot編集部】

 平安時代中期に紫式部によって執筆された「源氏物語」。希代のプレイボーイである光源氏が繰り広げる恋愛模様に心を躍らせた人も多いでしょう。しかし、「源氏物語」が1000年以上にわたり愛され続けているのには理由があります。「源氏物語」の研究を行っている椙山女学園大学の高橋麻織准教授によると、単なる恋愛物語ではないといいます。本当の魅力とはなんなのでしょうか。

 ◇ ◇ ◇

「源氏物語」をより楽しむために着目したいポイントとは?

――1000年以上も愛され続けている「源氏物語」ですが、どんなところに着目して読むと、より物語を楽しむことができるのでしょうか。

「まずは、恋愛物語だけじゃない点に着目してほしいですね。平安時代の読み物というのは、基本的には若い女性が読むものでした。ですから、恋愛物語が一般的です。しかし、『源氏物語』はそれだけではないという点で特別な作品なのです」

――それはどういうことでしょうか。

「はい。女性が読んでいたのが物語。では、男性は何を読んでいたかというと、歴史書だったのです。男性貴族はみんな政治家だったのですが、当時の政治がどうやって執り行われていたかというと、決議を下すときに、過去に同じようなことがあったかどうかをまずは調べていました。そして、その先例をもとにして決議されていたのです。ですから歴史を知らないといけなかったので、当時の男性はみんな歴史の勉強をしていました。『源氏物語』は漢字ではなく、女性が読むことができる当時のかなで書かれていたので明らかに女性向けに書かれていたものだったのですが、どうやら内容的に当時の政治的な要素や王権制度のことが書かれていたので、男性もこぞって読んでいたそうなのです」

――作者である紫式部の高い教養がそのまま反映されていたのでしょうか。

「そういうことかなと思います。さらに古今和歌集の和歌や、漢詩が引用されています。たとえば世界三大美女のひとり、楊貴妃と唐代の皇帝・玄宗皇帝との悲劇を詠んだ長恨歌(ちょうごんか)など。高い教養を持ち合わせていると、より物語に深みや奥行きを感じられるので、それが作品の魅力につながっていったのだと感じます。そういった部分も味わっていただきたいですね」