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遺産2億円を母と相続すると勝手に決めた兄 徹底抗戦のかまえも…揉めるとつらい相続税事情とは

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

父の死後、兄と遺産相続で揉めることに…問題点は?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
父の死後、兄と遺産相続で揉めることに…問題点は?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 親や配偶者と遺産相続について、話し合っていますか? 相手の死を想定した話しのため、抵抗があるという人も少なくないでしょう。しかし、そうして先送りしていると、いざというときに揉めて高額な相続税を払わざるを得なくなる可能性もあると語るのは、豊富な実務経験がある税理士で、マネージャーナリストの板倉京さん。なぜ遺産分割で揉めると、相続税が高くつくことがあるのか解説します。

 ◇ ◇ ◇

突然送り付けられた「遺産分割協議書」 驚きの内容とは

 今回の相談者は、2か月前に父を亡くし、その遺産相続について兄から寝耳に水の報告を受けたという佐藤久美さん(仮名・45歳)です。

「先日、兄から突然『遺産分割協議書』が送られてきたんです。中身を見ると、父の財産は兄と母で相続するって書いてあって。意味がわからなかったので、兄に電話してみると『父さんの財産は長男である俺と、配偶者の母さんで相続する。お前は嫁に行ったんだから、いいよな』って。その書類にハンコを押して送り返せっていうんです」

 久美さんが持参した「遺産分割協議書」を見ると、確かにすべての遺産を兄と母が相続するという内容になっていました。

「全然納得できなくて、文句を言ったら『お前にはハンコ代として50万円やる』『母さんのときも同じだけやる』って。自分は父さんの面倒なんか何もみないで、私に押し付けていたくせに。もう頭にきた。絶対こんな書類にハンコなんて押しません!」

 久美さんが怒るのも無理はありません。なんとお父さんの遺産は、2億円はあるとのこと。なのに、自分は50万円だけなんて納得できませんよね。この相続の話し合いは、長期化するのではないかと思われます。

揉めると“相続税が安くなる2つの特例”が使えなく可能性が…

 しかし、ここで問題が……。相続で揉めると、高い相続税を払うことになる可能性があるのです。

 少々難しい話になりますが、相続税が安くなるいくつかの特例があります。主なものは「配偶者の税額軽減」と「小規模宅地等の評価減」という特例です。

「配偶者の税額軽減」というのは、配偶者(妻・夫)がもらう財産であれば、最低でも1億6000万円まで、もしくは法定相続分まで相続税がかからないという制度。

「小規模宅地等の評価減」は、一定の要件を満たした人が自宅を相続する場合、土地の評価額を8割も下げてくれる制度。どちらも大型の節税がみこめる特例です。

 しかし、この特例を受けるためには、原則として「相続開始(被相続人が死亡したことを知った日)の翌日から10か月以内に遺産分割協議を調えて、相続税の申告書を提出すること」が必要です。この期限内に財産の分け方が決まらなかったとしても、相続税の申告期限までに申告と納税をしなければなりません。そのため、分割で揉めてしまうと、特例が受けられず高額な相続税を払うことになるのです。