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遺産2億円を母と相続すると勝手に決めた兄 徹底抗戦のかまえも…揉めるとつらい相続税事情とは

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

親が元気なうちに財産分与について話し合いを

 では、久美さん家族の場合、特例を受けずに相続税を納税することになったら、いくらかかるのでしょうか。遺産総額2億円(うち自宅の土地の価値が6000万円)だとすると、特例が受けられない場合の相続税はなんと約2700万円! 具体的には、お母さんが1350万円、久美さんとお兄さんはそれぞれ675万円ずつ支払うことになります。

 一方、期限内に財産の分け方が決まって、特例が2つとも適用できた場合はどうでしょう。お母さんが2分の1相続したとすると、相続税はゼロに。兄と久美さんが支払う相続税の合計は約770万円になります(それぞれ分割した割合に応じて負担)。特例が受けられない場合との差は、およそ2000万円!

 そうは言っても、遺産分割が期限内に決まらないことも。そんなときには、税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」(3年以内には財産をわけるという届出書)を提出しておく方法があります。この届出をしておけば、3年以内に財産の分け方が決まれば、決まった日の翌日から4か月以内に申告をすることで、還付申告が可能です。

 届け出をしておけば、ゆっくり決めることができるじゃないか、と思った人もいるかもしれません。しかし、財産の分け方が決まらないと、被相続人の財産は分割が決まるまで勝手に動かすことはできません。しかも銀行口座は、持ち主が亡くなったとわかると、凍結され動かせなくなります。

 令和2年の民法改正で、一定額以内であれば遺産分割協議前でも、ほかの相続人の同意なしで預金をおろせる「預貯金の払い戻し制度」が創設されました。ところが、金融機関ごとの残高のうち、おろせるのはその相続人の法定相続分の1/3まで(最大150万円)とされていて、すべての預金を下ろすことはできません。基本的には誰がその預金を相続するかがはっきりするまでは、口座は動かせなくなるのです。

 口座からお金が引き出せないということは、この高額な相続税を自腹で立替えるということ……。悲惨すぎますよね。

 こんな大変な目に合わないためにも、どうか相続で揉めないようにしていただきたいです。できれば、親がお元気なうちに、家族全員が納得いくような財産の分け方を相談し、遺言書の形にしておいていただきたいと思います。

(板倉 京)