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たくさん食べられなかった息子のオーダーに応えた母の思い プロ野球選手の好きな“おふくろの味”

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

ハンバーグは好きな料理として人気のメニュー(写真はイメージ)【写真:写真AC】
ハンバーグは好きな料理として人気のメニュー(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 地位も年齢も関係なく食べたくなるのが「おふくろの味」。そこには、郷愁や記憶だけでは説明できない何かがあるようです。プロ野球の埼玉西武ライオンズで育成契約から這い上がり、2022年度のパ・リーグ新人王を獲得した水上由伸投手にとって、最高のごちそうは母親特製のハンバーグなのだとか。自炊も得意だという水上投手ですが、「帰省のときのお楽しみ」というおふくろの味について伺いました。

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おふくろの味のレシピ大公開 隠し味にケチャップ

「それはもう、ハンバーグとメンチカツですね。とくにハンバーグはたまに外食で食べるときもありますけど、母が作るほうが断然おいしいです」

 体が資本のプロ野球選手にとって、食べるのも仕事のひとつ。近年は球団によってしっかりと栄養価を計算された食事が用意される一方で、遠征先では豪華な晩餐のテーブルを囲むことも少なくありません。それでも水上投手が一番好きなものは「ハンバーグ」。世の多くの男子ならば間違いなく共感できる料理を挙げるあたり、ちょっと微笑ましい感じもします。

 水上投手によると、母の香代子さんが作るのは「普通のハンバーグ」だそうですが、「あまり大きくないもの2皿にしてもらって、ドミグラスソースとおろしポン酢で食べます。大きいハンバーグを半分にして食べると味が混じってしまうので、あえて分けてもらっています」というこだわりぶりです。

 気になるハンバーグのレシピですが、「あまり作っているところを見たことがないので……」という水上投手に代わって、母・香代子さんご本人から秘伝のコツを教えていただきました。

「ポイントは下味に、隠し味としてケチャップを入れることです。あとは、ひき肉はツノが立つまでしっかりと手でこねること。そして、こねる際は“おいしくなあれ~、おいしくなあれ~”と唱えること」なのだとか。

たくさん食べるほうではなかった少年時代 好きなものを作ってくれた母への思い

 中央アルプスの木曽駒ケ岳を臨む長野県南部宮田村から、初の日本プロ野球組織(NPB)所属選手となった水上投手。小学3年生のときに少年野球を始め、山梨県の帝京第三高校時代にはすでに親元を離れて寮生活だったため、おふくろの味がいつも目の前にあったわけではありませんでした。

「ハンバーグを食べたいなあ……と思っても、高校生の頃は違うことをしているといつのまにか忘れていて。それで(四国学院)大学生のときは『せっかくだから』と自炊もしていました。我流ですけど(苦笑)」

 プロ野球選手というと、さぞ子どもの頃からたくさん食べていたのでは? と想像してしまいます。ちなみに現在、身長176センチ、体重79キロという水上投手ですが、意外にもあまりたくさん食べるほうではなかったそう。

「好き嫌いはないんですけど、好きじゃないものはあまり食べなかったから、母は僕がたくさん食べるように、好きなものを作ってくれていたのかもしれません」

 そんな息子を思いやり、母・香代子さんがリクエストに応えてくれたメニューは、ほかにメンチカツ、オムライス、スパゲッティとまさしく男子の大好物がずらり。しかも、「同級生もよくうちに食べにきて、みんな『おいしい』って言ってましたね」と話すように、母の手料理は人気があったようです。

 母・香代子さんの実家がみそ店だったことから、みそを使った豚汁も忘れ難い味のひとつ。それ以外で思い出にあるのは「手巻き寿司」だといいます。試合で活躍した際や、チームが優勝した小学6年生のときにもリクエストしたのだとか。ところが、「マグロなど数種類あったんですけど、あの頃はカニマヨが好きで、それしか食べてなかった」と振り返ります。

 アスリートのなかには体重の増減を気にして食生活に気を使う選手も多くいますが、「シーズン中はあまり考えていません。むしろ食べたいものを食べて、できるだけストレスを溜めないようにしています」という哲学は、子どもの頃の食生活からきているようです。