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たくさん食べられなかった息子のオーダーに応えた母の思い プロ野球選手の好きな“おふくろの味”

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

料理男子ながら、まだ手を出していない母のハンバーグ

 そんな水上投手は料理上手な母親のDNAを受け継ぎ、大学生のときからはじめた自炊はプロ野球選手になった今も継続中。可能な限り自分で作るそうで「一人暮らしなので、夏でも鍋はよく作りますね。レパートリーはそう多くはありませんが、土鍋で作って次の日も食べたりしています。簡単だし、野菜や肉なども一緒に摂れるので」と話します。

 ただ、大好きな母のハンバーグだけはいまだに手を出していないそうです。「母から教わったりはしていません、面倒なので。作れない言い訳ですけど、帰省したときに食べる楽しみをとっておこうということにして……」と笑います。

 プロ野球選手は毎年1月の自主トレーニングに始まり、キャンプ、オープン戦を経てシーズンに突入します。10月にシーズンが終わっても秋季練習などがあり、実は帰省できるのは年末年始くらい。そのときは「母が食べたいものを聞いてくれるので」と、ハンバーグをはじめ好物の品々をオーダーするそうです。

 地元に帰れば同級生や友人知人も待っていますが、「外に飲みに行く誘いがあっても『家でごはんを食べてから行くよ』って答えていますね」というほど、限られた時間でしか堪能できないおふくろの味をとても大事にしています。

 出身地の宮田村にはウイスキー醸造所があります。20歳を過ぎてからは、地元産のウイスキーがお気に入りの逸品になったそうです。実家に帰った際には父の俊孝さん、母・香代子さんとともにグラスを傾ける時間もあるのだとか。

「帰ったら『今年も1年間ありがとう』って感謝して、ごはんのときに一緒に飲むと『ああ年末だな』って気分になりますね」

 わずかな時間しか一緒にいられないからこそ、故郷とおふくろの味に心癒されるのでしょう。

◇水上由伸(みずかみ・よしのぶ)
1998年7月13日、長野県上伊那郡宮田村生まれ。投手、背番号69。帝京第三高校(山梨県)時代は投手兼三塁手、県大会4強。四国学院大学時代は外野手だったが、3年時に投手転向した。2020年育成ドラフト5位で埼玉西武ラインズに入団、翌2021年5月に支配下登録され、背番号128から69に変更。同年6月10日に1軍昇格、翌11日の中日ドラゴンズ戦でプロ初登板した。2023年は右肩のコンディション不良などもあり23試合の登板で0勝2敗5ホールド1セーブ、防御率2.12。最速152キロ、カット、スライダー、シュートを軸にフォークやカーブも操る。名前の由伸は父親が元読売巨人軍の高橋由伸さんのファンだったことに由来する。

(芳賀 宏)