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認知症の父が自転車を“窃盗” アラフィフ娘が経験から気づいた「認知症700万人時代」に意識すべきこと
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超高齢社会となり、認知症患者数も増加の一途をたどる日本。アラフィフの筆者自身も、約2年前に70代の父が「認知症」と診断され、日々進行する父の症状と向き合い、時には悩みつつも理解と協力を家族で深め続けています。今回は、認知症の父が起こしてしまった、自転車“窃盗”事件の経験談と、そのことから感じた来たる「認知症700万人時代」に向けて自分自身が今から意識しておきたいことを綴りたいと思います。
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出かけた父が見知らぬ人の自転車に乗って帰ってきた
父が認知症と診断されてからおよそ2年。症状はゆるやかに進んでいます。私はすでに実家を出ているのですが、父は母と暮らしており、様子を見に行ったり、病院に同行したり、電話で話をしたりして見守っています。時には介護のセミナーや専門家に話を聞きに行き、理解に努め、良さそうだと思ったことを取り入れたりもしてきました。こうした中、父が見知らぬ人の自転車に乗って帰ってくるという“事件”を起こしました。
11月上旬の朝のこと――。
「お父さんが、新しい自転車を買ってきちゃったのよ!」
と、あきれた様子で母から電話がかかってきました。
父は認知症になってから、過去に4度も財布を忘れて帰ってきたことがあり、現在は自転車を買えるほどのお金は渡していません。そのことは、お金を父に渡している母自体がいちばんよく知っているはず。そこで私は努めて冷静に母に言いました。
「お母さん。今すぐに、その自転車を見てきて。誰か他人のものを勝手に乗ってきたりしていない? 本当に買ってきたのであれば、防犯登録のナンバーが必ずあるはずだから、それを調べてみて」
そういうと、電話の子機を持ったまま移動したのでしょう。「あら? ××マンションっていう名前のシールが貼ってあるわ」と、なんとものんきな声が聞こえてきました。
「あのね。それは、そのマンションの駐輪許可シールだよ。つまり、誰か他人の自転車ってこと。今すぐ警察に電話をして、お父さんが認知症であることを伝えて、誰かの自転車を持ってきてしまっていると通報して」
そう伝えると、母は突然慌てだしました。病気のせいとはいえ、父が誰かのものを“盗んできてしまった”かもしれないことに驚いたのでしょう。「でも、お父さんは、買ってきたって言うのよ?」と、私の言うことが信じきれないといった様子です。
「そうだね。そう言っているかもしれないけど、確実に他人のだから。迷惑になるから、早く電話して」と、もう一度促すと母も納得したのか、警察に電話をしました。