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国の伝統工芸品に伝統的建造物…フリーアナウンサーが語る愛媛の魅力
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国の伝統工芸品にも指定された大洲和紙
さて、小田川沿いに少し足を伸ばすと、大洲和紙や大凧(おおたこ)で有名な五十崎があります。
国の伝統的工芸品に指定された大洲和紙は、正倉院文書にも登場するほど歴史があります。手作業で高品質の和紙を生産する天神産紙工場を見学しました。そこで、熱心に紙を漉いていたのは、手漉き和紙職人4年目の千葉航太さん。
「自分で紙を作ってみたいと思っていました。四国各地には優れた工房があるので、盛んなところでやってみたいと思って」
もともと和紙作りに興味を持っていた千葉さんは、はるばる岩手県からここ内子町までやってきました。
また、この工場内にある「株式会社五十崎社中」では、和紙の新たな可能性も探っています。代表は、神奈川県出身で通信系IT企業のシステムエンジニアだった齋藤宏之さんです。
齋藤さんは、地元五十崎の手漉き和紙産業を応援していた義父の勧めで、ギルディングというフランスに伝わる金属箔の伝統装飾技法を和紙に施した「ギルディング和紙」という新たな技術を独自に開発。生産販売を行っています。このギルディング和紙は、室内の装飾や内装材などにも採用されるほど、とにかく見たことのない美しさです。
齋藤さんの指導の下、私はギルディングを体験してみることに。独自の糊を塗布した葉書大の版に、好みの金属箔をのせて、ローラーで圧接します。さらにブラシをかけると、糊の部分だけに箔が残り、きらめく和紙の絵葉書が完成。送るのがもったいなくなり、大切に持ち帰って額に入れ、部屋に飾ってしまいました。
町の人々と接する中で感じた「近悦遠来」
内子町をめぐるなかで、私は何度も「近き者悦(よろこ)び、遠き者来る」という言葉を思い出しました。この言葉を教えてくれたのは、お世話になった農家民宿「ファーム・インRAUM 古久里来(コクリコ)」のオーナー・森長照博さんです。森長さんは元内子町助役で、長年町づくりを担当されてきました。
「『そばにいる人が喜べば、遠くからも自然と人が寄ってくる』という意味で、まず地元の人が喜ぶことが大切。それがひいては観光客も呼び寄せるという思いで町づくりをしているのが内子町です」
そんな森長さんの話を聞いたあと、町の人たちと接し、私はその言葉の意味を確かに実感しました。愛する町で好きなことをしているからか、町の人たちはみんな良い顔ですし、観光していても居心地が良いのです。
今回は外から縁あって内子町にやってきた人のお話を多く聞きましたが、それも「近悦遠来」かも。内子町にまた行くつもりです。
(横井 弘海)
横井 弘海(よこい・ひろみ)
東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。1989年よりテレビ東京アナウンサーとして、スポーツ、報道、情報番組を担当。フリー転身後はテレビ東京、TBS NEWS、時事通信社で約180か国の駐日大使取材を行い、「大使夫人」(朝日新書)を上梓。取材と旅行で訪れた国は世界約70か国。NPO法人「ハートTOハート・ジャパン~助かる命を助けられる国へ~」理事。コラム執筆、イベント司会、ナレーター、番組企画、コミュニケーションスキル研修講師も行う。