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中学受験で過ごした時間は「我が家にとって財産に」 母と息子が共に歩んだ3年間、当事者の本音

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム

自身の中学受験の過去「正座して泣いていた姿を今も忘れていません」

 そして、着実に進めていった受験準備。親としてどのように接し、息子さんを応援してきたのでしょうか。

 それを語るうえでの背景事情があります。お母さんにとって自身も中学受験経験者だった過去の出来事です。「私は、自分の偏差値に見合った受験をせず、親の意思で学校を決めました。当時はそういったケースが大半だったかと思います。30年も前になりますが。結果、全て不合格となり私は公立に行きました。その際、母が涙を流して私に、『どうしてどこも、受かってくれないの。たくさんお金をかけたのに』と言い、正座して泣いていた姿を今も忘れていません」。だからこそ、「同じ思いは息子にはしてほしくなく、私の言葉選び、受験する学校選びは慎重でした」と語ります。

 息子さんへの応援スタイルは「自己肯定感を下げる言葉は絶対に使わない」がモットーと言います。「あの日あれを頑張ったからこの点数取れたね! こっちのできなかった教科は何が原因だろうね? と、不出来だったものに関しては自分で原因を考えるよう、促しました」。

 しかしながら、習熟度を少しずつ伸ばしていく年齢です。勉強というものはそうは簡単に進みません。「次のテストにそれを生かせるほど小学生は甘くはないんです。毎度のこと私が声をかけ、前回だめだった理由はどこで生かすの? 何をしなきゃならないの? やることたくさんあるよね? 口より手を動かして、というような言葉も出ていました」。

 なんとかサポートしたいという強い親心とは裏腹に、エスカレートしてしまうこともありました。

「あと1年なんだから頑張ってよ! 何で遊んでいられるのよ! という言葉が出てしまう日もありました。小学6年の12月ごろ、息子から、『ママ、俺ね、すごい頑張ってるんだ。ママからはそう見えないのかもしれない。でも俺はすごく頑張ってる。だからこれ以上俺の応援で、頑張れって言葉を使わないでほしい』と言われました」。

 そこで気付いた大事なこと。「その時にハッとしました。私の言葉がこの子をかなり追い詰めてしまっていたんだと実感しました。それ以来、安心感を与える応援に徹することにしました。大丈夫だよ。頑張ってるもん! きっと神様は見ていてくれるから。大丈夫! と毎日のように今日も頑張ったね! 大好き♪ という声をかけるようにしていました」。母の優しい言葉。息子さんは心穏やかに、勉強机に向かって集中できたでしょうね。

 今回、合格に成功した一番のポイントは、得意分野を生かせたこと。「できる算数を伸ばし続けることに特化したことだと思っています」と強調します。

「算数の個別は、教師歴30年の実績がある算数に特化した先生にお願いをしました。算数は中学受験において、一番点数の開きが見られる教科であり、ここを得点源として持っていることは最大の強みであるとの私の考えから、息子には常に算数はきっちりやることを言い続けてきました。理社はある程度暗記科目ですが、算数に関しては、できない子とできる子ではかなりの開きが出るので、国語ができない分、算数で得点を稼げるくらいに算数は仕上げました」。その先生からメンタルフォローや志望校の組み方、対策の仕方など、多くの有効なアドバイスをもらったそうです。

「第2志望合格の際もお電話をくださり、私は涙が出てしまいました。1年半お付き合いくださった算数個別の先生の関係も息子にとって大きかったと思います」。よき恩師との出会いも、大きな力になりましたね。

 また、ハグが親子の絆を強めました。長い受験が終わり、ねぎらいの言葉をかけると、息子さんは「ママ大好き」と涙を流して伝えてくれたそうです。「どうしてもやる気が起きない日は、ハグして充電しようと声をかけ、ハグしていました。結果2月受験の送り出しの際、最後のハグを…と思っていたら、サラっと学校に入っていき、母は肩透かしを食らってしまいましたが(笑)」。ちょっぴりおちゃめな秘話も教えてくれました。

「中学受験は過熱」をまざまざと実感 大事なのは「子を信じてあげること」

 一方で、日本では子育ての大変さが増しています。教育費の高騰化が指摘されていて、いわゆる“お受験戦争”は中学受験、小学受験までも過酷になってきています。

 当事者として、実際にどのように感じているのでしょうか。

「今年中学受験を経験し、毎年どんどん偏差値が上がる学校もありますし、倍率が毎年増加している学校もありました。合格できる人数(学校側で受け入れる人数)が変わらないにもかかわらず、中学受験は過熱しており、受験者数は増加傾向にありました。この結果、倍率は上がりますし、受かりにくくなっているのが現状のように思いました」。やはり、激化の実感があるそうです。

 そのうえで、「持ち偏差値と同等、または、マイナス5くらいだとしても、正直、倍率が高すぎて、受かりにくい学校があるのが現状です。しかしながら、全国的に教員不足であり、簡単に学校側も、クラスを増やせない、先生を増強できないという問題もあるかと思います。また、教育費に関しては、東京都では中学、高校に補助がありますが、住居の場所によってその恩恵が受けられないのは、大きな差だなと思っています。子どもの教育に関する金額は、全国統一していただきたいなと思います。やはり年間100万ほどかかる私立の中学授業料に対し、半分近く補助が出るのと出ないのとではかなり違います。これにより、私立に入れようと思う保護者が増える一方、都内に住むことを選ぶご家庭も増加し、中学受験への熱がもっと過熱するのではないかと思います」。切なる思いを明かしてくれました。

 改めて、中学受験に取り組む親子へのメッセージをお聞きしました。

「机に自ら向かうこともなく、『中学受験は親の受験』と世間で言われている意味が、3年間伴走をした結果、とても分かった気がします。お弁当作り、スケジュール管理、過去問印刷、塾の送迎、場合によっては、宿題のチェック、〇付け、やることは盛りだくさんですが、何よりも一番大事だったのは、子を信じてあげることだと思います。

 子どもにとって味方は親しかいないので、親だけは最後まで味方でいるべきだと思います。子どもとけんかをしながらも、罵倒がありながらも、その日の夜には、ごめんねをして、仲直りをしていました。常に私は子にとって味方であること、応援をしていること、そして信じていることを伝え続けた3年間でした。終わってみて、子の成長というよりも、親子の絆がとても深まったと思います。中学受験は、子が親離れしていく前に、長時間一緒にいられる最後の時間なのではないかと思います。その時間は、我が家にとって財産となりました。貴重な体験ができたことは、息子にとっても私にとっても、忘れない時間となりました。ぜひお子様との絆を深める時間としてほしいです」と話しています。

(Hint-Pot編集部/クロスメディアチーム)