カルチャー
日本のガムに「ええっ?」 スウェーデン人家族が思わず夢中になった工夫とは
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訪日外国人観光客と日々接する人がいます。それは、通訳案内士。プロのガイドとして、海外の人々に日本の魅力を伝えるのが仕事ですが、逆に気づかされることも多いといいます。そこで「Hint-Pot」では、通訳案内士の豊嶋操さんよる連載「ニッポン道中膝栗毛」をスタート。日本の見慣れた光景や当たり前の習慣を、外国人の視点から見てみませんか。今回は、外国人観光客に教えると驚かれるという、日本ならでは工夫が施された板ガムにフィーチャーします。
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外国人観光客を案内することで日本を再発見
「えっ? こんなところにも?」といった場所でも、外国人観光客を見かけることが増えた今日この頃。遠くから見ていると、「日本でどんなことを楽しんでいるんだろう?」という疑問がわいてくるかもしれません。
申し遅れました。はじめまして、通訳案内士の豊嶋操と申します。通訳案内士とは、訪日外国人の旅行をガイドし、日本の文化や伝統などを外国語で紹介する仕事です。
突然ですが、鏡に映った自分を見つめると「今日は顔色がいいな」など、普段は気づかない自分自身に気づくことがありますよね。この仕事をしていると、まるでそんなふうに日本を再発見することの連続です。
そこで、この連載では、通訳案内士の仕事を通して気がついた、日本人が「へぇ~」と感じる日本の新たな側面をご報告していきたいと思います。以後、どうぞお付き合いいただければ幸いです。
捨てようとしていたガムの紙で折り鶴
1年のある時期になると、外国人観光客を案内するため、集中的によく行く場所があります。それは両国国技館です。1月はとくに初場所観戦をしたい人が続出します。
例にもれず、今年も1月14日から大相撲一月場所が開催されると、私は3日と開けずにゲストを案内することになりました。この日はスウェーデンからの方々で、ご両親と小学生のお子様2名の4人家族です。皆さんはおやつを食べたりしながらお楽しみの様子で一安心。
しかし、長丁場だからなのか、次々とガムを噛んでいます。すると、お子さんがその包み紙をポイっとゴミ袋に入れそうになったので、私は思わず声をかけました。
「これね~、折り紙できるのよ~」
実は、ある板ガムの包み紙は、切り取り線が印刷されており、指示通りに切り取ると約5センチ×5センチの正方形の折り紙になります。しかも、1パックに9枚入ったガムのうち、7枚におりがみ仕様のデザインが施されており、柄が被らないようランダムに入っているそうです。
子どもたちが「ええっ?」と驚くと、溜まった包み紙を家族総出で正方形にちぎり出しました。いやいや、手を動かすのもいいけど「相撲も見よう」と声をかけたのは言うまでもありません。
鶴はすでに有名なのでしょうね。私の出番はなく、彼ら自身で次々と折っています。
「日本人は平面から立体を創り出すのが好きなんだね」
日本の「Origami」は、今や国際語になっています。ホテルのレストラン名など、日本を象徴するようなものやことに、その名を見ることが多くなりました。
でも、名前は知られてきたとはいえ、その歴史はまだまだ謎なことが多いようです。この日もやはり「いつからあるの?」と聞かれました。
折り紙はもともと、神事で供物を紙で包むようになったことから、婚礼時の三々九度で使う銚子に付ける飾り(雄蝶雌蝶)など、主に儀礼用として発展していきました。
その後、礼法から離れ、折り方そのものが楽しまれるように。江戸時代には庶民にも親しまれるようになり、明治時代に入ると、幼児教育用としておなじみの片面に色のついた正方形の折り紙ができたと言われています。
……と、まぁこんな説明をすると、彼らは妙に納得していました。
すると、「昨日、一緒に行った居酒屋でも、お箸の入っていた袋を折っていたよね? 日本人は本当に平面から立体を創り出すのが好きなんだね」と、私が箸袋で箸置きを作っていたことに対して、お父さんから指摘が。