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夫の死から2年後に約700万円の追徴課税 専業主婦が陥った落とし穴 税理士が解説
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「贈与」を主張するには証明が必要に
しかし、妻側はそんな言い分に納得できません。輝美さんも「これは夫の財産ではなくて、私の財産です。夫にもらった生活費をやりくりして30年間かけて貯めたお金なんです」と嘆いていました。私も主婦なので、気持ちは痛いほどわかります。でも、税務署はそれを許してはくれません。夫が稼いできたお金は誰の名義であっても、夫の財産であるというのが、基本方針です。
もし、本当に「私のお金」であれば、そう主張すべきです。ただその場合は、「親からの相続や自分で稼いだもので、夫とは関係ない」ということ、もしくは「夫からもらった」と主張されるなら、「贈与でもらった」ことを証明しなければなりません。
ところが、贈与の証明となると、相続税の調査のときには「あげた」(と思われる)側の夫はすでに亡くなっています。それゆえ贈与を証明するのはとても難しいのです
そもそも「夫のお金は自分のお金」と思ってやりくりしてきているわけですから、「贈与」だったなんて認識がない人がほとんどでしょう。ルールでいえば、その財産は間違いなく夫の財産となります。これを知らずに、相続税の申告で妻名義の預金を相続財産として申告していなければ、あとからペナルティを科されてしまうのです。
年間110万円を超える贈与にも税金がかかる
相続税がかかりそうな財産があり、かつ妻に渡した生活費は相続税の対象にしたくないというのであれば、夫婦間であっても、いつの時点で「贈与」があったのかをはっきりさせておくことが肝心です。
おすすめなのは、「生活費で残った分は妻に贈与する」という契約書を作る方法です。ただし、年間110万円を超える贈与を受けた場合には贈与税の申告が必要です。
「夫婦間でそんな水臭いことを」などと言わず、たとえ夫婦間であっても、贈与があったかどうかをはっきりさせ、贈与があったら証拠を残す。これが一般常識では測れない相続税法を順守するための方法なのです。
(板倉 京)
板倉 京(いたくら・みやこ)
1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。