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「手に取ってみたくなる」 若年層のアルコール離れに風穴を 老舗酒造メーカーの思い

公開日:  /  更新日:

著者:芳賀 宏

寒い時期に恋しくなるお湯割り(写真はイメージ)【写真:写真AC】
寒い時期に恋しくなるお湯割り(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 若者のアルコール離れが指摘されていますが、「下町のナポレオン」の愛称で知られる本格麦焼酎「いいちこ」が新たなアプローチを展開しています。冬の寒い時期に身も心も温かくなるホット専用カップ商品のお湯割り焼酎「ホッといいちこ」は、今時の「感度の高い若者」に向けた商品として企画されたのだそうです。製造する三和酒類株式会社に、販売までの経緯と狙いを伺いました。

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レンチンするだけの「ホッといいちこ」 飲み方のアレンジもさまざま

 温かみを感じるデザインのカップを電子レンジでチンするだけで、あの「いいちこのお湯割り」のできあがり。手軽さだけではない「ホッといいちこ」のユニークさは、飲み方のアレンジをみてもわかります。

 アルコール度数は6%と弱め。オーソドックスに梅干しやレモンは加えるのはもちろん、「ブラックペッパーや八角を効かせたスパイス仕立て」「シナモンとハチミツを入れて」といったアレンジがあります。

 また、SNS上には、「コンビニでおでんを一緒に買って“だし割り”にしたらおいしかった」「ホットレモネードとジンジャーパウダーを入れて」といった、アイデアあふれる飲み方を紹介するユーザーも多くいるそうです。

 実際、特設サイトを覗いてみると“いいちこ応援団”というモニターが食中酒として楽しんだり、「金柑のシロップ煮」を入れてみたりと思い思いのアレンジをアップ。今年1月30日に全国のコンビニエンスストア、ECサイトで販売をスタートして以来、注目を集めています。

焼酎のコアユーザーが高齢化 若年層を取り入れるためにプロジェクトがスタート

右から、営業本部の田部真治部長と同本部コミュニケーションデザイン室の近藤早苗チーフ【写真提供:三和酒類株式会社】
右から、営業本部の田部真治部長と同本部コミュニケーションデザイン室の近藤早苗チーフ【写真提供:三和酒類株式会社】

 発売45周年を迎えた「いいちこ」は不動の人気を誇る確固たるブランドです。しかし、現代の焼酎はコアユーザーが50代以上という業界全体の課題もありました。

 今回の商品開発は卸業者向けの展示会で見かけた他社商品がきっかけだったそうで、営業本部の田部真治部長は「少しでも若い層を取り込みたい。市場には冬の時期の温かいお酒を飲むニーズはあるはず。もちろん『いいちこ』があるので、そこがマッチした商品企画ができないか」と2022年9月にプロジェクトがスタートした経緯を明かします。

 まずはどのような世代に、どのような商品を提供すればいいのかを探る「コンセプト調査」を実施。ターゲット層が見えてきました。

「賛同、共感してもらえるのは『情報感度が高くて、こだわりを重視』、年齢層も20代後半から30代前半で、普段から焼酎などお酒に触れている方がヒットしたのです」と話すのは、同本部コミュニケーションデザイン室の近藤早苗チーフ。さらに、ターゲットとなる年齢層の多くにコンビニでの購買が多いこともわかり、あえて販売はコンビニと評価を受け取れるECサイトで数量限定という形になっていったそうです。

 コンセプトが決まれば、あとは商品の内容です。男女ほぼ同数をモニターで集め、味わいからパッケージまで次々に試してもらって、答えを突き詰めていきました。