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養子縁組で節税するつもりが…トラブルに発展した2つのケース 税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

相続税対策で孫を養子にするも、大騒ぎに(写真はイメージ)【写真:写真AC】
相続税対策で孫を養子にするも、大騒ぎに(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「相続税対策には養子縁組が有効」と、耳にしたことがある人もいるでしょう。しかし、思わぬ揉め事の種になることもあるようです。豊富な実務経験がある税理士で、マネージャーナリストの板倉京さんが相談を受けた2つのケースを見てみましょう。

 ◇ ◇ ◇

法定相続人が1人増えるごとに基礎控除額も増える

「相続税対策には養子縁組をするといいと聞いて、長男の息子(孫)を養子にしたのですが、それがほかの子どもたちにバレてしまって……。『自分の子どもも、養子にしてほしい』と大騒ぎになってしまいました」

 相談者の田中正夫さん(仮名・62歳)は、先祖代々からの地主で、複数の不動産を賃貸経営している資産家です。田中さんの妻は3年前に他界。子どもは長男、長女、次女の3人で、孫は総勢10人います。

 昔気質な田中さんは、先祖代々の土地は長男に多く相続させたい、またその跡目も長男の息子に継がせたいと考えていました。そこで、ほかの子どもたちには内緒で、長男の息子(孫)を養子に決めたのです。

 確かに、養子縁組は相続税の節税に役立ちます。日本の相続税は、法定相続人が多いほど安くなる仕組みになっているからです。養子縁組された養子は、法定相続人の数にプラスされるのです。

 相続税の課税ライン(基礎控除額)は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。つまり、法定相続人が1人増えるごとに基礎控除額が600万円増える計算になります。また、ちょっと難しい話になるので詳細は割愛しますが、基礎控除額以外にも、相続税の計算過程では、法定相続人が多いほどかかる相続税が安くなるような計算になっています。

 たとえば、総資産20億円の田中さんの場合、相続人が子ども3人だけの場合と、孫を養子にして4人になった場合の相続税を比較してみると、3人の場合は約8576万円、4人の場合は約8050万円と、その差は約530万円にもなるのです。

法定相続人になれる養子の数は決められている

 また、生命保険金の非課税枠と退職金の非課税枠も、法定相続人が多いほど増えます。非課税の枠は「法定相続人の数×500万円」。つまり、法定相続人が1人増えるごとに、非課税になる金額が500万円増えるということです。

 1人養子にしただけでそんなに節税になるのなら、ほかの孫も養子にしてあげればいいんじゃないの? 孫が10人いるなら全員養子にすれば、すごい節税になるはず! と思った人もいるかもしれません。でも、そうは問屋が卸しません。

 民法では、養子縁組をした人は全員養子として認められますが、相続税法では、相続税を計算するうえで法定相続人の数に入れられる養子の数が制限されています。具体的には、実の子どもがいる場合は1人まで。実の子がいない場合でも、2人までしか養子を法定相続人の数に含めることができません。

 となると、養子10人はとても厄介な事態を招くだけになってしまいます。相続税の節税に役立つのは1人だけなのに、財産をもらえる人は10人も増えてしまうのですから。

 田中さんも「ただでさえ、どう財産を分ければいいのか頭を悩ませているというのに、これ以上養子を増やしたら相続争いの火種になってしまう」と言っています。

 でも、はっきり言って、ほかの子どもたち(長女、次女)に内緒で長男の息子だけを養子にした時点で、揉め事になることは目に見えていたと思いませんか? そんなこと、いつまでも秘密にしておけるはずがありません。

 田中さんは、これから娘たちが納得する遺産の分け方を家族で話し合っていくことになりますが、なかなか大変な道のりだと思われます。