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養子縁組で節税するつもりが…トラブルに発展した2つのケース 税理士が解説

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

両親と養子縁組した夫と離婚 まさかの揉め事に

 同じように、養子縁組で困った思いをした人がいます。佐々木久美子さん(仮名・58歳)も先祖代々続く地主の家系。久美子さんは一人娘で、このままだと多額の相続税がかかると言われ、節税対策のために久美子さんの夫を、両親の養子にしたそうです。

 しかし! 養子縁組をした数年後、久美子さんは夫と離婚してしまいました。久美子さんと夫の婚姻関係は離婚届を出すことで解決しましたが、婚姻と養子縁組は別物です。養子縁組を解消するには、両親と久美子さんの元夫が同意して、縁組解消の手続きをしなければなりません。

 もちろん、久美子さんの両親は、娘と別れた元夫との養子縁組を解消したいと申し出ましたが、元夫はそれを拒み続けたといいます。このまま養子で居続ければ、資産家の相続人として多額の遺産を相続する権利を持ち続けることができるのですから、気持ちはわからなくもありません。

 のらりくらりと逃げ続ける元夫との養子縁組を解消する前に、久美子さんのお父さんが亡くなり、元夫は法定相続人として相続権を主張してきたといいます。最後は、揉め事になることをおそれた久美子さんのお母さんがいくばくかの財産を渡したと、久美子さんは悔しそうに話していました。

 このように、養子縁組は揉め事の種になりやすい側面があります。相続税の節税を追い求めるあまり、かえって大変な思いをすることのないよう、注意してください。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。