どうぶつ
ブリーダーや多頭飼育の崩壊で増え続ける保護猫 約250匹を保護するNPO団体の活動とは
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猫を家族の一員としてお迎えする方法として、保護猫の譲渡を選択する人が増えています。さまざまな誓約を交わし家族の“ひとり”となった子が、安全に幸せに暮らせるようにするには、どんなことに気をつける必要があるのでしょうか。コラムニスト・峯田淳さんが、保護猫活動について連載する企画。今回は、猫の保護活動を行っているNPO団体の状況について綴っています。
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保護猫が増え続けている背景
我が家の元保護猫は「ガトー」「クールボーイ」「そうせき」の3匹です。このうち今年で5歳になるクールボーイと2歳のそうせきは保護猫団体のNPOくすのきからもらった猫です。
これまでNさんとしてきた代表は那須美香さんといいます。そこのお手伝いをして、我が家にクールボーイとそうせきをお世話してくれたのがMさん、伊藤真澄さんでした。伊藤さんは、くすのきとは別に伊豆高原にあった保護団体のボランティアに参加。その縁で、ガトーをお世話してくれた人でもあります。
那須さんは熱海で20年以上にわたって保護猫活動を行っています。現在、くすのきでは約250匹の保護猫がいます。最近では高齢猫の保護猫依頼やブリーダーの崩壊、多頭飼育の崩壊などによるレスキューの依頼が急増しているそうです。250匹の半数以上が高齢猫や何らかの疾患を持っている猫だそうです。
被災地の猫たちの保護活動に支援も
そして、今年は緊急事態が発生しました。能登半島地震です。テレビでも猫や犬を飼っている人が動物と一緒に避難する様子が報道されました。ペットが嫌いな人、アレルギーがある人がいて、ペットを飼っている家族が避難するのに困っている様子などの映像も流れました。しかし、その裏ではもっと悲惨なことが起きていました。家が崩壊して家族が亡くなるなかで猫も行き場を失い、迷子、行方不明になった猫がたくさんいるのです。
こんな救援活動を行っている団体の話もあります。
珠洲市で11歳になるこたちゃんが行方不明に。まず飼い主の家にトレイルカメラと捕獲器を仕掛けました。しかし、すぐに違う猫が入ってしまったそうです。そこで一旦撤収し、飼い主が自分で管理できる日に捕獲器を設置できるように貸し出し、こたちゃんの名前を呼びかけながらカメラなどを仕掛けていたら、家の中からこたちゃんが出てきたそうです。こたちゃんは脱水症状があり、病院で補液などを行い、2週間くらいで食欲も出てきて元気になったそうです。
幸運にも救助できた例ですが、くすのきでは現地の猫を支援するために「恩送りプロジェクト」を行っています。猫の食糧、トイレの砂などさまざまな支援物資と募り、能登に届けようという活動です。2月3日には85人から受け取った支援物資の中から、緊急支援の要請があったものを仕分けし第一便を発送しました。
くすのきが被災地への支援に熱心なのは21年に熱海市伊豆山地区で起きた大規模な土砂災害を経験したからです。逢初川(あいぞめがわ)が氾濫して盛土した山肌が土砂として流れ、集落は崩壊してしまいました。死者が28人、被害を受けた建物約140棟、600人近い人が避難しました。
熱海はご近所のような土地柄で、当時、伊豆高原に住んでいた伊藤さんもその悲惨な街の姿を目の当たりにしました。那須さんは現地に向かい、保護猫、野良猫といわず救助しました。保護猫か野良猫かわからないまま、手元にあるデータなどと照らし合わせながら、保護した猫は150匹近く。一気に保護猫が増えてしまったのです。
このときも救済本部、東日本大震災でボランティア活動した人、カフェ、シェルター、ペットホテルを運営しているボランティアの方々にお手伝いをしてもらったそうです。そんな経験があるからこそ、能登への「恩送りプロジェクト」に励んでいるわけです。