仕事・人生
CAから奈良の家業の靴下会社に勤務 ストッキング開発でつなぐ父への思い
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ストッキングをはく女性が減っているなか、ストッキングを着用する女性を多く見かけるのが航空業界です。自身も元客室乗務員(CA)だからこそわかるストッキングの悩み。そんな女性が製品化した「Flight Stockings(フライトストッキング)」が航空業界で注目され始めています。さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。前編では、祖父が立ち上げた会社で「フライトストッキング」を製品化した開発秘話について、株式会社鈴木靴下の鈴木みどりさんに話を伺いました。
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CA時代の経験から生み出した消臭ストッキング
鈴木さんが開発したフライトストッキングは、一日中、ストッキングをはいて歩き回るCAのために作られたストッキングです。どうしても足の臭いが気になってくるというCAの悩みに応えるべく、消臭効果を高めたストッキングを開発。航空会社などの社内にある物販機に置いてあるほど、多くのCAたちに愛されています。
「フライトストッキングはCAさんにはいてもらいたいという一心で作ったのですが、ターゲットを絞りすぎたのはわかっています。でも、そもそもCAさんにとって身近なアイテムになってほしいとの思いで取り組んできたので、最初の目標をまずは達成することができたと思っています」
そう語る鈴木さん自身も、日系航空会社のCAでした。現在勤務する鈴木靴下は、1958年に鈴木さんの祖父が子ども向け靴下の製造会社として立ち上げた会社で、現社長は父です。
父の努力する姿を見ていただけに「覚悟が必要だった」
鈴木さんは、大学卒業後にCAの道を選びました。その理由は、両親の「子どもにはいろいろな経験をさせてあげたい」という強い思いと、鈴木さん自身が「外の世界を見てみたかったし、まだ覚悟がなかった」と感じていたからだそうです。
今でこそ、「米ぬかソックス」のアイテムなどで知られる鈴木靴下。しかし、下積みが長く苦労した時期もあったそうで、兼業農家でもあった父が米ぬかソックスの開発に取り組む姿を、鈴木さんは子どもの頃から近くで見てきました。
「米ぬかは、お米を精米する過程で排出されるものです。昔、学校の廊下の床を米ぬかが入った袋(ぬか袋)で拭いたらピカピカになった記憶が父にあったようで、『捨てるのはもったいない。ぬか袋のような靴下があれば足もつるつるになるのでは』と考え、鍋で靴下と米ぬかを煮込む手作りの開発から始めました」
試作品を作っては実際に試してもらい、アンケートを取る。集計結果から修正を加えて、また試作品を作る。そうやって日々、試行錯誤を重ねていく父。子どもながらに感じた「ひたすら努力する姿勢」の大切さは、実際にCAとして仕事をするようになって実感として身にしみたといいます。
CAとして3年勤めたあと、“覚悟”を持ったという鈴木さん。「何ができるかわからないけれど、父の力になりたい。父が作り上げたものを守りたい」という強い気持ちで、家業を継ぐために奈良に戻ってきました。