仕事・人生
CAから奈良の家業の靴下会社に勤務 ストッキング開発でつなぐ父への思い
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父と同じように自らの経験と思いをいかした商品を開発
入社した鈴木靴下では、経理の仕事からスタートしましたが、「父が開発した米ぬかソックスを直接お客様に届けたい」という思いが強く、ECサイトを立ち上げました。ただ、販売の管理システムに慣れるだけでも相当の時間がかかり、それ以前にパソコン自体にも不慣れ。靴下の知識もビジネスの経験もなかったため、思いはあっても何をどうすれば良いのかわからない状態でした。
「根底にずっとあったのは、自分は何をしているんだろう、なんの役に立っているんだろうという思いでした。父は『こういうこともしてくれた』と褒めてくれるんですけど、自分の中では何ひとつ実感がなかったんです。それが本当に歯がゆくて。それで、自分だからこそできることをしたいという思いが強くなったんです」
そんなとき、役に立ったのがCA時代の経験でした。
「消臭機能の高い加工剤があることを教えていただいたときに、足が臭うという自身のCA時代の悩みと紐づいたんです。13回ぐらいだったかな? ともに開発してくださったストッキング工場さんが何度も何度もサンプル作りに協力してくださって。また、現役CAの友人たちにも試してもらい、科学的な根拠と実際の使用感の両輪で開発したのがフライトストッキングでした」
鈴木靴下には、靴下作りのノウハウはあったものの、ストッキング作りのノウハウはありませんでした。鈴木さんは何もないところから、子どもの頃に見ていた父と同じように試行錯誤を重ね、靴下でも米ぬか繊維でもない、自分の経験をいかした新しい製品を作り上げました。
航空業界と靴下の製造会社。業種はまったく違いますが、共通しているのは顧客に寄り添うこと。鈴木さんはフライトストッキングの開発を通して、その大切さを改めて感じたそうです。
1958年に奈良の地に創業した、株式会社鈴木靴下 米ぬか事業部部長。幼い頃より家業を見て育ったが、大学卒業後、日系航空会社にてキャビンアテンダントとして約3年間勤務。その後、家業である株式会社鈴木靴下に就職した。父が開発した「米ぬか繊維」を活用した商品の開発に加え、元CAというキャリアをいかし、「Flight Stockings(フライトストッキング)」を開発。現在、大手航空会社の社内でも販売されている。また、高校時代に日本へ留学していたスウェーデン人の男性と国際結婚し、2児の母でもある。
(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)