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仕事・人生

「根底が違う」 元CAが感じた国際結婚の価値観のずれ 埋めるために必要だったこと

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・出口 夏奈子

夫との出会いでコンプレックスの塊から変わるきっかけに

 夫が日本での生活で不思議だと感じたことと同様に、鈴木さん自身もまた、スウェーデンで生まれ育った夫と一緒に過ごすことで、発見したことがあるといいます。それは「今を楽しむ」ということです。

「たとえば私、ものすごく仕事人間なんです。結婚した当初、まだ夫婦ふたりだったときは、夕飯を食べるためにいったん自宅に戻り、ごはんを食べたらまた仕事しに出かけて、真夜中まで仕事したり、週末や休日も仕事したりしていました。すると夫から、『僕たちはなんのために結婚して、僕はなんのために日本に来たの?』と言われて。その一方で夫は、すごく多趣味な人なのですが、仕事は仕事、休みは休みとメリハリをつけられる人で、休みの日も家族との時間が最優先。そのうえで、自分の趣味の時間も大切にしています。3Dプリンターを使って雑貨を手作りするなど、自分の時間もやっぱり楽しんでいるんです」

 夫の結婚生活で、鈴木さんは、何に対しても「○○しないといけない」という思いがとても強かった自分に気づいたといいます。

「そんな私に、夫は『みどりは責任感が強いところが良いところだけど、今を楽しむことも大事だよ』と言ったんです。そこでハッとさせられました。時間をかけて夫と対話を重ねるたびに、『今を楽しむことも忘れてはいけない』と考えるようになりました。夫は、日本の文化や価値観を理解し、受け入れながらも、自分のスタンスをぶらさずにきちんと持っている人です」

 また、夫と出会い、鈴木さんは「自分のことが好きになったんです」と笑顔を見せます。

「つきあっていた当初、私は自分の容姿や性格すべてに自信が持てず、コンプレックスの塊でした。そんな私に、夫は、小恥ずかしいくらいのポジティブな言葉を常にかけてくれて(笑)。毎日毎日ポジティブな言葉をかけてもらうと、不思議なんですけど、だんだんとポジティブに考えられるようになってくるんですよね。そうやって少しずつ自分に自信がついてきたような気がします」

 スウェーデン人の夫の存在は、鈴木さんの仕事に対しての向き合い方にも大きな影響を与えています。

「主人からのポジティブな言葉がきっかけとなり、私は変わりました。ちょっとしたきっかけが人を変え、笑顔を生み出すことを、身をもって実感しています。今、鈴木靴下は自分たちの社会的意義を改めて考え直す時期にきていますが、それを考えるうえでこの実体験がいきているように感じています。『自分たちの商品が誰かの悩みに寄り添うことで、コンプレックスをも愛せる、ありのままの自分をも愛せるきっかけになってほしい。それが、今の自分をもっと楽しむことにつながるのでは』と感じています」

 しなやかさと強さを得た鈴木さんは、今後ますますの飛躍を目指しています。

◇鈴木みどり(すずき・みどり)
1958年に奈良の地に創業した、株式会社鈴木靴下 米ぬか事業部部長。幼い頃より家業を見て育ったが、大学卒業後、日系航空会社にてキャビンアテンダントとして約3年間勤務。その後、家業である株式会社鈴木靴下に就職した。父が開発した「米ぬか繊維」を活用した商品の開発に加え、元CAというキャリアをいかし、「Flight Stockings(フライトストッキング)」を開発。現在、大手航空会社の社内でも販売されている。また、高校時代に日本へ留学していたスウェーデン人の男性と国際結婚し、2児の母である。

(Hint-Pot編集部・出口 夏奈子)