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相続税をなるべく払いたくないのですが、生前贈与やタンス預金はバレますか? 税理士が回答

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

税務調査された9割が申告漏れ

 また、申告された額が税務署の想定よりも低ければ「どこかに財産を隠しているのではないか」「生前に多額の贈与などをしているのではないか」と調べ始めます(税務調査)。

 実際に税務調査が入ると、かなりの確率で財産の申告漏れが見つかります。国税庁が発表した「令和4事務年度における相続税の調査の状況について」によると、その年の実地調査件数8196件のうち、申告漏れなどがあったのは7036件。税務調査が入ったうちの9割弱で申告漏れが発見されたということです。

 調査の主な対象は現金、預金、有価証券といった金融資産。不動産と違って、金融資産は隠しやすいと思われる財産なのです。そして、相続税の税務調査の際には、贈与税の申告漏れも厳しく調査されます。

 調査は、故人の過去の預金通帳のチェックから始まります。調査官は、銀行の取引記録を納税者の同意なく、銀行に提出させることができるのです。

 確認した通帳から、たとえば100万円を超えるような大きな金額や、生活費にしては多いと思われる金額が定期的に引き出されていると「タンス預金・隠し財産があるのではないか」「誰かに贈与をしたのではないか」と疑い、徹底的に追及してきます。

 税務調査では、故人の預金通帳だけでなく、その家族の預金通帳もチェックされます。妻(夫)や子、孫の通帳にどこから入ってきたかわからない大きな入金があれば、贈与が疑われることも。また、家族の預金が、その人の稼ぎに対して多額だった場合なども「贈与でもらったのではないか」と疑われます。

 また、相続後に故人からもらったタンス預金を、自分の通帳に移したことから見つかったケースもあります。

ペナルティでさらなる税金が課される場合も

 税務調査で隠し財産や贈与税の申告漏れが見つかると、ペナルティがあります。本来より少ない額で申告した場合は「過少申告加算税」、申告をしなかった場合は「無申告加算税」、とくに悪質な財産隠しをしたとみなされた場合は「重加算税」が課されます。

「過少申告加算税」は、納付すべき税金の10~15%
「無申告加算税」は、納付すべき税金の15~20%
「重加算税」は、過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%

 それ以外に「延滞税」という利息のようなものがつきます。これが、2022(令和4)年1月1日から2024(令和6)年12月31日までの期間、年8.7%(最初の2か月のみ年2.4%)と高利貸し並みの利率なのです。

 ペナルティもさることながら、財産を隠して税務調査が来るなんて、残された家族の心労は計り知れません。大切な家族のことを思うなら、「タンス預金や生前贈与なんてバレないよね」などと脱税に頭を使うのではなく、適切な節税や揉めないための準備をされることをおすすめします。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。