お金
毎年ふるさと納税で50万円を寄付していたところ、「税金がかかる」と税務署から突然連絡が来ました。払わなければいけないのでしょうか?
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節税も目的のひとつとして、ふるさと納税を利用している人は多いと思います。しかし、思わぬ収入で課税対象になってしまうことがあると話すのは、豊富な実務経験がある税理士でマネージャーナリストの板倉京さん。悩みをもとに解説します。
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今まで問題のなかった確定申告 突然の連絡に困惑する妻
「税務署から『夫のふるさと納税に税金がかかる』といわれたんですが、本当ですか?」
経理の仕事をしている岸田晴美さん(50歳・仮名)。毎年、夫の明さん(50歳・仮名)の確定申告を任されており、そのことで相談に来ました。確定申告といっても、給料とふるさと納税、医療費控除だけの簡単な申告で、今まではなんの問題もなかったといいます。
明さんは、上場企業の部長職。年収が高く、払う税金も多いので、毎年ふるさと納税の上限額を確認し50万円程のふるさと納税をしていたそうです。ところが、今年の確定申告を出し終わって数か月経った頃、明さんの携帯電話に税務署から電話がかかってきました。
「生命保険会社から保険の満期金を受け取っているようですが、それについての申告漏れがあります。税務署に来てもらえませんか?」
明さんは昨年、生命保険の満了時期を迎え、満期保険金を受け取っていたのですが、そこに税金がかかるとは知らずに、申告をしていなかったのです。さらに、職員はこんなことを言い出したそうです。
「岸田さんは、ふるさと納税をかなりしていますね。今回は、これも課税の対象になります。」
ふるさと納税の返礼品に所得税がかかる?
所得税や住民税の節税になると、人気のふるさと納税。寄付をした自治体からの返礼品を目当てに、利用者は増加し、令和5年度では約890万人が利用したといわれています。
そんなふるさと納税ですが、実は受け取った返礼品は、所得税の課税対象になるのです。「ふるさと納税の返礼品は、地方公共団体から受けた贈与になるため、『一時所得』に該当する」というのが、国税庁の見解です。
ふるさと納税とは、応援したいと思う地方自治体に寄付をすることで、寄付金控除(所得税や住民税の控除)を受けることができる制度です。本来、寄付とは見返りなしに金品を贈ること。
しかし、ふるさと納税は「寄付」をすることで、その土地の名産品などを受け取ることができるようになっていて、「寄付」というより「お買い物」に近い形になっています。
これは、税金の面から見ると、「寄付(ふるさと納税)」と「寄付先からの贈与(特産品をもらう)」という、ふたつの行為が行われていることに。「寄付(ふるさと納税)」は、寄付金控除で所得税や、住民税の控除・還付が受けられる優遇制度の対象となる一方、「寄付先からの贈与(特産品をもらう)」については、一時所得という所得税をかけますよ、というわけです。
返礼品の金額は寄付額の3割程度のはずなのに…
とはいっても、ふるさと納税の返礼品をもらったら、即税金がかかる! というわけではありません。ふるさと納税の対象とされる「一時所得」は、50万円の「特別控除額」があるため、儲けが50万円を超えない限り、税金はかかりません。
ふるさと納税の儲けとは、もらった返礼品の金額です。現在のふるさと納税の制度では、返礼品は寄付額の3割以下にすることとされているので、一時所得の対象となる返礼品の金額は、寄付額の3割程度と考えられます。
単純計算で、150万円超のふるさと納税をしないかぎり、ふるさと納税のみで一時所得の控除額50万円を超えることはありません。
明さんは、年間約50万円のふるさと納税をしていましたから、その3割は15万円。本来ならば、一時所得の特別控除額(50万円)以下ですから、これに税金がかかることはありません。