お金
兄と姉は「えこひいき」されたのに遺産相続はきょうだい「平等に」 異議を唱えた弟 まさかの結末
公開日: / 更新日:
親は平等に接しているつもりでも、子どもは受け取る愛情や支援に差を感じている場合があります。そうした問題が浮かび上がるタイミングのひとつが遺産相続。遺言書も作成し、しっかりと準備をしていても、揉めないとは限らないのです。豊富な実務経験がある税理士でマネージャーナリストの板倉京さんが、お悩みを基に解説します。
◇ ◇ ◇
「平等に」1000万円ずつ 亡き父が遺した遺言書
今回の相談者は、2か月前に夫・太郎さん(享年75歳)を亡くした佐藤まゆみさん(72歳)です。ふたりの間には、長男の一郎さん(45歳)、長女の華子さん(42歳)、次男の二郎さん(35歳)の3人の子どもがいます。
太郎さんは、妻と3人の子どもたちのため遺言書を残していました。ところが、その分け方をめぐって3人の子どもと話し合いがまとまらず、まゆみさんはご相談にいらっしゃったのです。
太郎さんが残した相続財産は、以下の通りです。
自宅マンション 時価1億円
預貯金 5000万円
合計 1億5000万円
太郎さんの遺言書は、預金のうち3000万円を子ども3人で1000万円ずつ「平等に」相続すること、そして、残りはすべて妻のまゆみさんへという内容でした。その遺言書を前に、子どもたちが揉めてしまったといいます。
異議を唱えた次男 納得できない理由とは
「父さんは、俺たちきょうだいに争いが起こらないように、平等になる相続を考えていると言っていたが、その通りの遺言書だな。ありがたいよ」
長男の言葉に、次男が異議を唱えました。
「兄さんは、本気でこれが平等だと思っているのか? 言わせてもらえば、自分にはこれが平等だなんて、まったく思えないね。僕だけが損をしている。そう思わないか?」
なぜそう思うのかと問いただす一郎さんに、二郎さんは次のように答えました。
「理由はいろいろだ。まずは兄さんの留学費用。大学を出たあとに、アメリカの大学院に行った費用は父さんが出したんだよな。2年で600万円くらいかかったんだろ。姉さんは、家を買うときに父さんに500万円出してもらっているし。それにひきかえ、僕は何ももらっていない。しかも、兄さんたちは子どもにだって預金をしてもらっているじゃないか。僕には子どもがいないから、そんな預金もない。そういうことも考えて初めて『平等』って言えるんじゃないのか?」
実は、太郎さんは生前、孫が生まれるたびに預金通帳を作成し、それぞれの孫の通帳に毎年50万円ずつ振り込んで、渡していたそうです。
結果的に、一郎さんの2人の子どもたちには合計1600万円、華子さんの2人の子どもたちには合計1500万円が贈与されました。
この主張を聞き、まゆみさんは母として「確かにこれでは次男がかわいそうだ」と思ったといいます。しかし、一郎さんは真っ向から反論。
「でも、遺言書があるんだから、その通りに分けるしかないんだよ。だいたいお前は結婚もしないで、気ままに暮らしていたんだ。俺たちは家族を持って子どもを育てている。それに、孫に贈与してくれた預金は相続と関係ないじゃないか」
でも、二郎さんは引き下がりません。
「遺言書があるからって、必ずその通りに分ける必要はないんだ。ちゃんと平等にしてくれなければ納得できないよ」