Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

お金

兄と姉は「えこひいき」されたのに遺産相続はきょうだい「平等に」 意義を唱えた弟 まさかの結末

公開日:  /  更新日:

著者:板倉 京

遺産相続にはつきもの…きょうだい間の嫉妬感情

 みなさん、このきょうだいの言い分を聞いてどう思いますか? どちらかが間違ったり、欲張りだったりすると感じられますか?

 私は、どちらの言い分も、その人の立場になればわからなくはないと思います。

 とくに、次男の二郎さんについていえば、遺産の取り分が少ないという事実よりも、お父さんにほかのきょうだいと同じように扱ってもらえなかったことに傷ついてしまったのではないかと心配しています。

 心情的なことを申し上げると、子どもにとって相続というのは、親からの最後のプレゼントです。まゆみさん一家のような場合、「兄さんや姉さんは生前にたくさんもらっていたのに……。これはえこひいきだ」と感じてしまうのも無理はありません。これは相続特有の感情、きょうだい間の嫉妬の感情なのです。

「父さんは、兄さんや姉さんのほうがかわいかったのではないか……」。二郎さんはそう思ってしまったのかもしれません。

「えこひいき」はきちんとフォローを

 結局、まゆみさんが中心になり、遺言書を採用せず、話し合いで財産を分けることになりました。「このまま遺言書通りに遺産分けをしていたら、この先きょうだい仲が元に戻るか不安だった」とまゆみさんは言いました。

 よく「うちの子どもたちは欲がないし、仲がいいから相続で揉めたりしない」とおっしゃる方がいます。しかし、相続で揉める理由は欲だけではないですし、年を取ったきょうだいというのは親が思うほど「仲良く」はありません。

 お互いに自分の家族、自分の生活を持てば、子どもの頃の関係と変わってしまって当然なのでしょう。

 いろいろな相続の現場を見てきて思うのは、「えこひいき」は相続を揉めさせる大きな要因のひとつだということ。やむを得ず「えこひいき」をしてしまう場合は、事前の話し合いや遺言書などで、「えこひいき」されなかったほうの子どもをきちんとフォローしておくことをおすすめします。

※登場する人名はすべて仮名です。

(板倉 京)

板倉 京(いたくら・みやこ)

1966年10月19日、東京都生まれ。神奈川県内で育ち、成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒。保険会社勤務後に結婚。29歳で税理士資格試験の受験を決意し、32歳で合格する。36歳での長男出産を経て、38歳で独立。主な得意分野は、相続、税金、不動産、保険。テレビでは「あさイチ」「首都圏ネットワーク」(ともにNHK)、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)、ラジオでは「生島ヒロシのおはよう一直線」(TBSラジオ)などに出演して解説。主な著書は「夫に読ませたくない相続の教科書」(文春新書)、「相続はつらいよ」(光文社知恵の森文庫)、「女性が税理士になって成功する法」(アニモ出版)、「知らないと大損する! 定年前後のお金の正解」(ダイヤモンド社)など多数。